第52話 条件
ということでそれから数日後、俺たちご一行は城へと呼び出された。
相変わらず荒れきった庭園を通って蔦まみれの城へと入城すると、ライン老人が俺たちを出迎えてくれた。
「ローグさま、お久しぶりです……」
なんだろう……前回会ったとき以上にやつれている気がする……。
そんなライン老人に「守衛の方々でおわけください」と改めて『ウルネアに行ってきましたまんじゅう』を手渡すと「お心遣いありがとうございます」とまんじゅうを受け取ってくれた。
それから俺たちは蜘蛛の巣まみれの大広間を通って、例の謁見の間へとやってくると、しばらくしてライン老人に車椅子を押してもらいながらロリコン布団がやってきた。
「お久しぶりにございます」
俺とレイナちゃんがロリコン布団に向かって跪く。
と、そこで「ローグさま」とライン老人が俺の名を呼ぶ。
「本日はレビオン王国のルリリ殿下についてお話があるということですが……」
ということなので早速本題を口にすることにした。
「ええ、本日はレビオン王国にいらっしゃる王女に代わりまして、陛下の元へと馳せ参じました」
「ほぉ……王女は陛下にどのようなご用件で」
「婚姻についてでございます」
と、俺が口にした瞬間、布団がピクッと体を震わせた。
お、これは良い反応なのか?
「かねてよりレビオン王国はガザイ王国と婚姻を結び、新たな王家を設立することを悲願と考えております。リルア女王と婚姻は諸事情により叶いませんでしたが、ルリリ殿下もいずれはレビオンの王位を継がれるお方であらせられます。即位のあかつきには是非とも陛下との間に婚姻を結ぶことができればとリルア女王は考えておられます」
というか結婚してくれないと俺たちアルデア王国が困る。
何が何でもルリリ王女と結婚して貰いたい。
そんな俺の言葉に国王は布団から手を出すと、ライン老人を手招きした。
布団は近寄ってきたライン老人になにやら耳打ちをする。
「陛下は『すぐにでも』とおっしゃっております」
決断はっや……。
どうやらリーユのおかげで完全にロリコン墜ちしているようだ。
が、そっちが乗ってくるのであれば、俺にも作戦がある。
「グラウス海軍大将」
レイナちゃんを呼ぶと、彼女は懐から紙を取り出して俺に手渡した。
俺は紙へと目を落とす。
「婚姻を結ぶに当たってルリリ殿下からいくつか条件があるそうなので、読み上げます」
ということで、リルアと使者を通して、あらかじめ打ち合わせをしておいた条件を読み上げようとする俺だが。
「お言葉ですが……」
と、そこでライン老人が間に割って入る。
「レビオン王国から条件の提示というのは少し腑に落ちませんなぁ……。レビオン王国とガザイ王国はともにネルレシア大陸の最上位に君臨する王家にございます。条件を飲むということはガザイ王国がレビオン王国に謙ることになります」
そりゃそうだ。
王家というものはメンツを一番大事にする。
確かにレビオン王国が結婚に条件を出し、それを飲むことはガザイ王国にとっては謙ったも同然なのかもしれない。
が、だ。
残念ながら、レビオン王国とガザイ王国は対等ではないのだ。
サキュバスに性癖を歪まされた国王にとって、ルリリちゃんは何が何でも手に入れたいはずだ。
もちろんレビオン王国としても婚姻を決めたいところだろうが、今のガザイ国王ほど焦ってはいない。
そんな状態で対等とか言われてもねぇ……。
が、ライン老人が国王を立てるのは当然だし、それは織り込み済みだ。
といことで。
「ラインさまのお言葉はごもっともでございます。あ、そういえば……」
俺はわざとらしくハッとした顔でレイナちゃんを見やる。
すると彼女は一瞬『え?』と首を傾げたが、すぐに作戦を思い出して衛兵に「あれをローグさまに」と命令をする。
衛兵が俺の元へと風呂敷に包まれた高さ1メートル横幅50センチほどの薄っぺらい長方形の物体を俺の元へと持ってきた。
「大変失礼いたしました。実は今回の謁見に際しまして陛下に献上したいものがございました」
ということで俺は風呂敷をライン老人に差し出す。
「こ、これは?」
と、風呂敷を受け取ったライン老人は訝しげに首を傾げた。
「どうぞご覧になってください」
そんな俺の言葉にライン老人は首を傾げながらも風呂敷を解いた。
そして、現れた物体を目の当たりにしたライン老人は「こ、これは……」と驚いたように目を見開く。
「お納めください」
俺が献上した物、それはレビオンのなんとかっていう有名な絵描きに描かせたルリリ王女の肖像画だった。
「お、おおっ!!」
と、布団の中からそんな声が聞こえた。
ロリコンホイホイ。
絵画の中のルリリ王女はゴスロリ衣装を身に纏い、玉座に座りながらやや蔑むような目を向けている。
渾身のドSモードルリリちゃんの絵画だ。
国王が気に入らないはずがない。
しばらく国王は目を奪われたように布団の中からギロリと照明を反射させた瞳を絵画に向けていた。
が、しばらくすると「ルリリの条件を申してみよ」と今度は瞳を俺へと向ける。
「へ、陛下……」
そんな国王にライン老人は少し動揺したような表情を浮かべるが「かまわん。条件を申せ」と国王は続ける。
ということで条件を読み上げることにした。
「えへん……では……。まず第一にルリリ王女は陛下にガザイの国王としてふさわしい立ち振る舞いを求めておられます」
と、俺が言うと同時にどさりとそれまで国王を覆っていた布団が床に落ちた。
そして、車椅子に座った金髪碧眼の凜々しい顔の青年が姿を現す。
え? めっちゃくちゃイケメンじゃん……。
「改めて挨拶をしよう。私はガザイ王国国王イブナ2世だ」
どうやらロリリ王女……じゃねえやルリリ王女への執念が彼に王としての威厳を取り戻させたようだ。
いや、本当に取り戻しているのか?
「で、他の条件は?」
と、突如布団からイケメンに変貌を遂げた国王に愕然としながらも、俺は慌てて紙へと目を落とす。
「え、え~と……あとは……」
ということで条件を読み上げていく。
リルア女王が国王に突きつけた条件は以下の通りだ。
ルリリ王女との正式な結婚は彼女の即位を待ってから行うこと。
ルリリ王女との同棲は認めるが、彼女が18歳を迎えるまでは、ルリリ王女が望まぬ限り婚前交渉は一切行わないこと。
ルリリちゃんのことが好きなら4年ぐらい我慢できるよね?
さすがに齢14歳の女の子がこんな変態にあんなことやこんなことをされては俺としてもリルアとしても罪悪感がパないからな……。
そして、最後の条件は一番大事な条件だ。
「最後に、今回のレビオン王国とガザイ王国の仲立ちをしたアルデア王国とは今後友好関係を築き、魔法石の輸出を優先的に行うこと」
これこそが俺がこの度、遠いガザイ王国までやってきた理由なのだ。
何が何でも飲んでくれなければ困る。
「以上がルリリ殿下からの婚姻の条件にございます。これらのうち一つでも破られた場合は婚姻の約束は即時破棄、ルリリ殿下は二度と陛下の前に姿を現さないでしょう」
「ぐぬぬっ……」
そんな俺の条件に国王は下唇を噛みしめる。
とんだロリコン野郎である……。
が、それでも愛しのルリリちゃんがお嫁さんになってくれると言ってくれているのだ。
国王に拒否権はない。
「わ、わかった……飲もう……」
ということでレビオン王国とガザイ王国は王家統一に向かって大きな一歩を踏み出した。
――――
書いてから気がつきました。
この性癖曲げる流れ『親友の妹が官能小説……』で見た気がする……。
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