第47話 サキュバス捕獲作戦

 とりあえずガザイ国王がサキュバスに誑かされていること、さらにはそれをライン老人が快く思っていないことはなんとなく会話から引き出すことに成功した。


 ならば早急にサキュバスを対処するだけだ。


 ということで、俺はネオグラードにある冒険者ギルドへとやってきた。


 もちろん、その理由はサキュバスの討伐依頼を出すためだ。


 金にものを言わせて優秀な人材を集めて、早々にサキュバスを討伐して全て解決。


 金こそ全て。金さえあればなんでもできる。


 そんな気持ちで俺はギルドへと乗り込んだ。


 さすがは王都ネオグラードである。ウルネアよりも三倍近くは巨大なギルド内には、魔族人間問わず冒険者たちがひしめき合っている。


「ローグさま、しっかり手を掴んでいてください」


 そんな中を同伴してくれたレイナちゃんに手を引かれながら受付へと歩いて行く。


 あ、ちなみにミレイネはお留守番である。


 マナイを満喫できなかった分、今日はホテルのプールで一日中遊ぶんだって。


 ということでなんとか受付へとやってきた俺とレイナちゃん。


 が、ギルドのカウンターは10歳の少年にはちと高すぎた。


「海軍大将……頼む」


 ということで、レイナちゃんに両脇を抱えられだっこをされた俺はカウンターのおねえさんを見やる。


「ようこそネオグラードギルドへ。本日はどのようなご用件でしょうか?」


 魔族なのだろうか、猫耳姿のおねえさんはにっこりと営業スマイルで俺を見つめた。


「え、え~と……依頼をしたいのですが……」

「依頼ですね。であれば、こちらの用紙にお名前と住所とご職業のご記入をよろしくお願いいたします」


 そう言っておねえさんはカウンターに紙とペンを置くので、そこに必要事項を記入していく。


 まずは名前だ。


 ローグ・フォン・アルデアと……。


 つぎにウルネアの城の住所を書いて……職業は……一応国王でいいのかな?


 なんて、とりあえずありのままを書いていると「あ、あの……ぼく?」とそこでおねえさんに止められた。


「どうかしましたか?」

「用紙には本当のことを書いてくださいね」

「いや、でも……全部本当のことですし」

「じゃあ国王ってのも本当なのかなぁ? おねえさんの目にはとてもぼくが国王には――」


 と、そこでレイナちゃんが懐からバンと一枚の紙をカウンターに叩きつけた。


 それは港で貰った俺の滞在許可証だ。


 そこには俺の名前と俺がアルデア国王で来賓として迎えられていることが記されている。


「えぇ……」


 と、許可証を見たおねえさんの目が点になる。


「偽造を疑うのであれば、城に問い合わせてみるといい。あと、そのふざけた言葉遣いで国王陛下に話しかけるのは止めろ」


 と、レイナちゃんが言うものだからおねえさんは「え? あ、申し訳ありませんっ!!」とペコペコと頭を下げると、慌てて許可証を持ってカウンターの奥へと駆けていった。


 あ、なんかおねえさん可愛そう……。


 そんなおねえさんのことを少し不憫に思いながら苦笑いを浮かべていると、しばらくして奥から上長らしき男がこちらへと慌てて駆けてくる。


 そして、俺たちは上長によつて二階の応接室へと案内された。


※ ※ ※


 ということで応接間へとやってきた俺は、急遽、部屋に運ばれたなにやらふかふかの一人がけのソファに腰を下ろす。


 テーブルにはティーカップ、そしてテーブルを挟んで向かい側には冷や汗をハンカチで拭いながら中年の男が腰掛けていた。


「いやはや、先ほどは部下が大変失礼いたしました。まさか国王陛下がこのような場所にいらっしゃるとは思っておりませんでつい……」


 と、平謝りをする男。


「いえいえ、こちらこそ急に押しかけるような真似をしてご迷惑をおかけしました。さぞ驚かれたことでしょう」

「めっそうもございません」


 と、顔の前で手をぶんぶんと振ると、男は懐から名刺を出してテーブルに置いた。


「わたくし、当ギルドの館長でございます。これよりご要望はなんなりと私めにお申し付けください」

「どうも、ローグ・フォン・アルデアです。よろしくお願いいたします」


 ということでこちらも頭を下げると、向こうはさらに恐縮して俺以上に深々と頭を下げる。


 なんだろう……国王という身分はなかなかに不便だ。


 今更そんなことを考えつつも、俺は単刀直入に要件を伝えることにした。


「先ほども申し上げたとおり、今日は当ギルドに討伐の依頼をするために参りました」

「わざわざご足労をおかけして恐れ多いことです。なんなりと私にお申し付けください」


 ならばなんなりと申しつけよう。


「実は魔族を捕らえて欲しいのです。そのために腕に自信のある冒険者を集めて欲しい」

「魔族……ですか? 具体的にはどのような」

「この街に出没するサキュバスを捕まえて欲しい」


 城でサキュバスを目撃したときは、丁度城からどこかへと飛び立つところだった。


 ならばずっと城内にいるというこもないだろう。


 ならばネオグラードの街に出てきたところをなんとか捕まえて欲しい。


 ここにはきっと腕の立つ魔術師が大勢いるだろう。


 サキュバスの強さは知らないが、彼らの力を集結すれば捕まえられない相手ではないだろう。


 そう思って館長に依頼の内容を口にしたのだが……。


「…………」


 そんな俺の言葉に館長は黙ったまま何も答えない。


「ん? どうかしたのですか?」

「え? あ、いや……」


 なんだ? この反応は……。


「何か問題があるのであれば、おっしゃってください……」

「国王陛下、大変申し上げにくいのですが……」


 館長はまた吹き出してきた汗をハンカチで拭いながら苦笑いを浮かべた。


「そのご依頼はお受けいたしかねます」

「はあっ!? なんでですか?」

「禁止されております」

「禁止?」

「サキュバスの駆除、捕獲の依頼は一切受けてはならないと城より通達が出ております」

「っ…………」


 どうやらサキュバス捕獲作戦は一筋縄ではいかないようだ。


――――

すみません。

作者、本業が大変多忙なため今週は文字数が少なめでお届けしております。

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