第13話 特別な傘


家の近くには海があった。

海には公園もある。整備されている綺麗な所だ。

私はベビーカーに1人乗せ背中にもう1人をオンブし

30分かけて汗だくだくになりながらちょくちょく遊びに行った。

もう1つは歩いて10分しないとこにあるとっても小さな公園。

ある公園に行った帰り道、いきなり雨が降ってきた。


ポツ…ポツ…ザーーー


りり(やばい!子供達が濡れる!でもここ下り坂だし走ったら危ない…でも急がなきゃ)


私は小走りに家に急いだ。

すると細道から大通りに入ろうとする車が一旦停止をし窓を開けた。

そこには40代〜50代の男性が乗っていた。


男性(大丈夫か!?もっと早く気づけよかった!ごめんなあ!)


そう言いながら男性は私達に

一本の紺色の傘を差し出した。


りり「いんですか?!ありがとうございます!!)

私は傘をさし、帰宅した。

久しぶりに感じた人の暖かさ

久しぶりに感じた人の本当の優しさ


りり(早く気づけばよかったって…そんなの無理なのに…優しすぎる…)

私は泣きそうになった。

他の人からしたら普通の優しさかもしれない。

でも心がダメになりかけてる私には

本当に特別な優しさだった。


りり(この傘、宝物にしよっ)

私は死ぬまでこの傘を捨てない事に決めた。


私は想太が帰ってくるとすぐに

今日あった出来事を話した。


りり「公園の帰り道、雨がいきなり降ってきちゃったんだけど男の人が傘くれたの!優しくて感動したよ!だからあの紺色の傘ぜっっったいに使わないでね!私の大切な物だから!」


想太「良かったね!わかった。使わない」


想太はそう言ってくれた。

私は雨が降るとよく傘の確認をした。


りり(うん。大丈夫!ちゃんとある)


何故こんなに確認をするかと言うと

想太は息を吐くように嘘をつく人だ。

でも(あんなに言ったしさすがに使わないでしょ)と思いながらもどこかでは信じれず確認をしてた。


とある日…

雨が降っていた。私は傘があるか毎回のように確認をしにいく。 …傘がない。

私はすぐ想太にLINEをした。


りり【ねえ、私が使わないでって言った紺色の傘持っていった?】

想太【あっごめん、傘無かったから持っていったよ】

りり【使わないでって言ったじゃん!絶対持って帰ってきてね】

想太【わかってるよ。】


傘が買えないのではない。

想太が全部職場に忘れて無くしてくる。


想太が帰宅する。

私はすぐに聞いた。


りり「傘持って帰ってきた?」

想太「あっ…忘れた(笑)ごめん明日必ず持って帰ってくるから!」

りり「あれは本当に私の大事な傘だからお願いね」


でも次の日も次の日も想太は持って帰ってこなかった。想太は最終的に見つからない。と言った。

違う場所に保管しとけば使わなかったのかもしれない。

後悔した。

私の大事な、特別な傘はもう一生帰ってこない。


想太の事はもう嫌いになるまできてた。

触られるのも気持ち悪い…。

だが想太はお構いなしに私にエッチを求めてくる。


想太「今日、ヤろ?」

りり「疲れてるからやりたくない」


毎回断るが想太はその度機嫌が悪くなる。

家には嫌な空気が流れる。それは次の日も変わる事なく機嫌は悪いまま、空気は重たい。

機嫌が悪い想太にビクビクし、重たい空気感にたえれず私は無理に行為をした。


りり(一回ヤッてしまえば数日は言ってこない。さっさとやってしまえば終わる事…。でもやりたくないよ。きもいよ。)


私は毎回断りながらも性行為をした。


気持ち悪い…

早く終わって…


そんな事を思っていても想太の言葉攻めは止まらない。私は機嫌を悪くさせない為に演技をする。


ヤッてる最中に涙が出てくる…。

泣いてても想太は気づかない。


もうやだ…。


そして行為が終わるとすぐに眠りだす。そんな毎日だった。


私達は結構な頻度で想太の実家に片道2時間かけて行った。想太の母親はお酒が入ると想太と同じでうるさくなる。


義母「りりちゃん。想太が何かしたら言ってね〜」

義母「なんかあったら言ってね〜」


義父「そうだよ!想太がなんかしたらすぐ言いなさい!」

義母はまだ想太が不倫してた事を知らない。


りり(言いたいけど、自分の息子を悪く言われたくないよね。言いにくいよ。でも義母の言う事は聞くからもしかしたら物に当たるのもやめてくれるかも…)

そう思いながらも私は、言えなかった。

言うには勇気がいる、タイミングがいる

話聞いてくれなかったらどうしよう。

逆に怒られたら…否定されたら…

色々な事を考えて言えなかった。


一緒に料理を手伝った。

義母義父に名前入りの焼酎グラスもプレゼントした。

義母義父にも申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

色々助けてもらって合わせる顔がないと思っていた。


そんな暮らしが数ヶ月続き私達はまた想太の実家に行った。今日は泊まる事になっている。

お布団を敷いて子供達を寝かせた。

想太は義母に対してイライラしていた。いつも通り想太は物に当たる。タンスを殴った、椅子を蹴った。

もちろん義母義父の見てない所で。


もちろん私の目の前で。


義母がこっちに来て子供達に毛布をかけながら

何かブツブツ言っている。

私は今だ!と思いドキドキしながら想太の事を義母に話す事にした。





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