第14話 少年グブラは語る
「グブラ君は何処から来たんだい?」
「あっち……」
名無しの金平糖の質問に、グブラは【始まりの街】方面を指差した。
「グブラ君は1人で旅をしてるのかな?」
アラシの質問には首を横に振り「んと、僕とおんなじぐらいの子達がいて……、その子達と一緒に行動してるよ」と言った。
「そっかぁ~、グブラ君みたいな子達がいるんだね?その子達はグブラ君のお友達になるのかな?」
ラブリーの問い掛けにグブラは「うーん……」と唸り、「友達とは、ちょっと違うかも……」と否定した。そして再び、名無しの金平糖が質問をしていく。
「グブラ君、さっきの能力は何になるのかな?このゲーム内のスキル?変身してたよね?」
「えっと、あれは……
グブラは隠さず答えると、腕時計型のデバイス画面を3人に見せていく。そこにはイランゲーム仕様のデバイス画面に極普通のアイテムボックスが表示されていたが、画面をタップして開くと【狩人】と表示された、見たことのないアイテムがそこには入っていた。そして【狩人】と表示されたアイテムのに横には数字があり、そこには46と表示されていた。残りは46回使用できるということだろう。
「もしかしてこれをタップすると、変身できるってことかな?」
ラブリーがグブラに質問をすると、グブラは「ううん、違うよ。んと……、これを使うにはちょっとしたコツがあって……」
もじもじとしながらもグブラは打ち明けると立ち上がり、「ちょっとやって見せるから、見ててね?」と言った。ラブリーもだが、名無しの金平糖もアラシも頷き、その場で見ることにした。そしてグブラはアイテムボックスを開いた状態でデバイス画面を口許に持っていき口にした──
「
するとグブラの体から先程放たれたような強烈な光源が放たれ、
「おお!トランス能力すげー!」
「俺もやってみたい!」
「楽しそうだね!」
名無しの金平糖とアラシとラブリーが興奮気味に言えば、グブラも嬉しそうに笑い、また口を開いた。
「これは特別に与えられたスキルなんだ。でも、この姿でいられるのは30分だけなんだけど……。もしこれでよければ、お姉ちゃん達も……使ってもいいよ?」
「ほー、そうか。なら遠慮なく使わせてもらうぜぇ、グブラ?」
グブラに答えたのは端末を手にして作業をしていたナイトだった。ナイトは端末を操作し作業しながら、事の顛末を見聞きしていたのだろう。非常に悪い笑顔で、屈強な狩人姿になったグブラに近づくなり肩をがしりと組んでいく。
「なぁグブラ、そのスキルをもっとスゲェもんに魔改造してやっからよ……俺様によこせや?」
言い方が完全に悪役の台詞だった。
「ごめんねグブラ君。このお兄ちゃん、ちょ~っと人との距離の取り方が分かってなくて、えーっと、つまり……グブラ君が特別に持っているスキルをちょっとだけ貰って、こっちのお兄ちゃんのデバイスにインポートして、保存させてもらってもいいかなぁ?」
ラブリーが笑顔でやんわりと説明すれば、グブラはコクりと頷き、腕時計型のデバイスを外してラブリーに差し出した。ラブリーはそれを受け取るとグブラにお礼を言ってからナイトに手渡した。
「はいっ、どうぞ……。もう、ナイトはもう少し優しく言いなさいよね?相手は子供なんだから」
「ちっ、分かったよ。悪かったよ……」
ナイトは完全にラブリーの尻に敷かれていた。
とまれ、グブラが持っている
「いやしかし、特別スキルがこんな小さな子達に与えられているということは当然、ゲームマスターもホフマーって奴も、何かしらやばいスキルを持ってると考えたほうがいいかもしれないな……」
「だな……」
名無しの金平糖が見解を口にすれば、それに同調するようにアラシも頷いた。そしてグブラはラブリーの服の裾を掴み、訊いてきた。
「ねぇ、お姉ちゃん達は……僕達のことを消したりしちゃう……?」
グブラが問い掛けてきた内容は酷く重かった。未だに狩人姿ではあるが、声のトーンは幼いままで、不安な表情でラブリーを見詰めている。
「消すだなんて……そんなことはしないし、そんなこともさせないわ。アタシ達を信じて……ね?」
ラブリーが宣言すればグブラはコクりと頷いた。そしてナイトはグブラの腕時計型デバイスに備わった
「あったぜ……!原発冷却を復旧する為のライフライン!」
ナイトが叫ぶようにして伝えると、名無しの金平糖、アラシ、グブラの手を引いたラブリーが駆け寄り、ナイトのデバイスを覗き込んでいく。するとそこには原発の冷却装置システムと共に、衛星兵器を使用する為のシステムもあった。ナイトは同時進行で見付けたのだ。だがどちらのシステムにも高度なプロテクトが掛かっていた。
「ナイト、突破できるのか?」
「当たり前だ。こんなの問題ねぇ、朝飯前だ!」
ナイトは宣言するなりプロテクトを解除をする為のコードを打ち込みながら指示を飛ばす。
「【秘境赤ずきんの森】に簡易チャットに仕掛けたような罠を設置した!そんで今、名無しの金平糖とアラシの2人のアイテムボックスにウサぴょんジュリナのアバターを10体ずつ贈った。そのアバターを解凍して解放すれば、後はリモートでウサぴょんジュリナが動かせ、攻撃も城内も散策できる!赤ずきんを1度救出するだけで全部のリワードも解放されるようになった!あとは頼んだぞ!俺は引き続きプログラムを作成する!」
そしてナイトは指笛を鳴らした。するとレッド・ドラゴンが出現し、近づいてくる。
「レッド・ドラゴンにはステルス機能を搭載したから、城まで安全に行けるはずだ」
「凄いな……。よくこの短期間でそこまでできるもんだな」
名無しの金平糖が改めて感心する中、ナイトはニヤリと笑った。
「俺を誰だと思ってんだよ、俺はシェキナとイランに関わった、真の創設者だぜ?」
「アタシとグブラ君はどうすればいいの?」
「ラブリーとグブラはここにいて俺の補佐をしてくれ!」
「うん、分かった……けれど、名無しの金平糖とアラシの2人で大丈夫かな?」
ラブリーの心配を他所に、名無しの金平糖とアラシは笑って返す。
「最初は油断したが、今度は殺られない。コアゲーマーとして死なずにタスクをクリアして、リワードを回収してくるぜ」
「だな?それに、俺も名無しの金平糖も上位プレイヤーとして各ゲームでランキングに入ってるしな……早々、死んだりはしない」
名無しの金平糖もアラシも力強く言った。だが先程のように不確定要素も発生するかもしれない、油断は禁物なのは2人とも理解していた。
「やばくなったら引き返すか逃げるさ。お互いにな」
「うん、気をつけて……」
「テメェ等、ぜってぇ死ぬなよ?」
ラブリーが無事を祈り、ナイトも無事と気合いをいれるように言い、そして……
「お兄ちゃん達……これも……」
するとグブラはまたデバイスを操作してアイテムボックスを開くと、そこからグブラがしてるようなフードつきのコートを2つ取り出し実体化させ手渡していく。
「これは……?」
名無しの金平糖が訊ねると、グブラは説明していく。
「これはステルス機能がついた特別なコートだよ。燃やされない限りは機能はそのままで使えるから、良かったら、これも使って……」
グブラは2人に差し出していく。
「いいのか?」
アラシが受け取る前に訊けば、グブラは頷いた。
「うん……僕も、きっとあの子達も……こんな状況は望んでないから……それに、お姉ちゃん達といるほうがいい……」
グブラが訥々と語る言葉は、まるでこの事情を知っている風だった。とまれ、グブラからフード付きのコートを受け取った2人はそれを羽織るとお礼を言った。
「ありがとうグブラ、大事に使わせてもらう」
「うん……。お兄ちゃん達も気をつけて……」
そして名無しの金平糖とアラシの2人はレッド・ドラゴンに乗り、ステルス機能使用で姿を消し【秘境赤ずきんの森】の城を目指して飛んでいく──
* * * * * *
「いやはや!ウサぴょんジュリナたんはかわゆいですなぁ!」
「ありがとぉ♪ジュリナの為にみんなが斯うして助けに来てくれて、そして写真も綺麗に撮ってくれて、ジュリナはとってもとぉ~っても!満足で感謝してまっす!」
ウサぴょんジュリナがお礼を言うと、雄叫びが上がり、その場のボルテージも次第に上がっていく──
「ではではみんなぁ~!ジュリナの為に協力してくれますかぁ?」
すると拍手と雄叫びの両方があがり「いいよぉ~♪」と答えていく。
「ありがとう♪ではみんなに、ちょぉ~っとだけ変身してもらいます♪変身はこの世界を救う為の変身でもあるんだけどぉ……本当にみんないい?」
ウサぴょんジュリナが遠慮気味に言うが、それに肯定する返事が次々と返った。
「ではでは!たった今、ジュリナのデバイスからみんなのデバイスのアイテムボックスにアイテムを贈ったよ♡それを開いたらその画面のままにして、『
するとまた雄叫びが上がっていく。【秘境赤ずきんの森】は完全にライブ会場のような盛り上がりになっていた。そしてその様子をナイトはダンジョンのカメラをハッキングした上で独自のデバイスに繋いでいき確認していた。ゲームマスターが迫ってきたらクエスト者達にトランスでマスターのコラ画像姿になってもらい、少し怯ませたところでウサぴょんジュリナアバターで煽りながら冷静さを失わせ、ウサぴょんジュリナアバターで一気に叩く作戦だ。
「ねぇナイト、成功するかな……?」
ラブリーは心配そうな表情で画面を見詰め、呟いた。
「ああ。成功しなければ名無しの金平糖も、アラシも城内に踏み込めないからな」
ナイトは真剣に言い、それから口にする。
「一応、この作業場所だけは干渉しない簡易シールドを張ったが、どれだけ持つか分かんねぇし、ここも危険になるかもしんねぇ。だからラブリー、やばくなった時は躊躇わず、ログアウトしろよ」
「しないよ……。名無しの金平糖、アラシ、それからナイトと一緒に戦うって決めたからね──それに、グブラ君のことも守らなきゃだし」
ラブリーが側にいるグブラに視線を送れば、グブラは少しだけ頬を染めて
「グブラ……か」
するとナイトは何かを思い出すかのように独り言ちた。
「ねぇナイト、ナイトはグブラ君のことを知ってるの?」
「このガキは知らねぇが、グブラという馴染みのダチはいたんだよ──いや、正確にはグブラという、最初からコードネームを与えられた男がいたんだ……」
ナイトは再び過去を
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