2-6 もう一つの異分子
「昨日のチクリ、ウザすぎたね」
「先生によく見られたいんでしょ」
「てかキモくねそばかす」
あれから真崎たちはあからさまに浜辺の悪口を言うようになった。浜辺や他の生徒、もちろん吉田にも私にも聞こえるように言っているのがわかった。
クラスで発言したら、正しいことを言ったら、盛り下げるようなことを言ったら標的にされるのが中学生のいじめのはじまりだった。浜辺はその典型だ。先生には優等生のいい子、生徒たちには頭の固いまじめちゃんでチクリ魔、そんな風に扱われていた。
気づけば浜辺は吉田より悪目立ちしていた。
いつものゲームセンター裏で煙草を吸っていると、真崎たちがゲームセンターに入っていくのが見えた。あの日から吉田が一緒にいるところは見ていない。
「最近来ないねあのダサ子」
金髪のウィッグを被った橋本が言った。
「さあ」
「なんかもっとやべぇやつがいるらしいよ」
酒井が煙草をふかしながら得意げに言った。高校生にしては大人びた見た目のくせに相変わらず言動は頭が悪そうだった。
「先生にチクるチクリ子ちゃんがいるんだって」
「まじ。キんモ」
浜辺の噂は三年にまで回っていたようだった。所詮こいつらも真崎たちと根本の脳みそは同じなのだろう。知りもしない浜辺の悪口で盛り上がっていた。
その盛り上がりについていけない私はすぐに火を消して立ち去った。せっかくの煙草の時間なのに気分が悪かった。
「あれ、みや行っちゃうの」
「今日は帰る」
「おーん。じゃあね〜」
その場から去りながら自分でもなぜ気分が悪いのかわからなかった。浜辺がどう言われようが私には関係のないことのはずだった。ますます自分がわからなくなるようでイライラした。
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