1-2 相島陽菜
僕に用意されたのは窓側から2列目の一番後ろの席だった。
僕と沖野は遅めの登校だったようで、40席ほどの教室の席は既に新しいクラスに浮かれた生徒たちで半分以上が埋まっていた。
指定された席に向かうまでの間、
「おはよう」
「お、はよう」
挨拶されたことに驚いて思わず不安定な声が漏れた。わかりやすく動揺している自分に嫌気がさしてわけのわからない気分だった。
でも、これから毎日相島陽菜と挨拶できるのならこのクラスも悪くないと、他の生徒たちのように浮き足立っている自分がいた。
席に着いてしばらくしても、彼女の後ろ姿を見ている自分がいる気がして落ち着けなかった。他のことで気を紛らわせようと春休みの提出物の確認をはじめた。
「ねぇ」
隣から澄んだ、いや、静かな誰もいない夜の海で話しているような碧海の声が聞こえた。横を見ると真っ黒な瞳がこちらを見ていた。
「ねぇ、相島さん、いいよね」
「え」
窓から入った光が碧海の黒い髪に反射していた。
担任が来て、HRが始まった。
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