リングイッサ:リングからめぐりめぐって

 リングといえば貞子のリングだ。

 実はこれが私のホラー小説入門みたいなものだ。

 話題になる少し前に手に入れて、それこそ呪いのビデオのごとく(複製こそしなかったが)見せて回った。

 

 この作品、実は妙なところも印象に残っている。

 原作の主人公の相棒、高山竜司の検死後のシーンである。

 どこかで著者の写真を見ていた私は高山竜司の身体のモデルは著者自身ではないかと感じ、一部の描写について変なところで大変失礼な納得をしたのである。


 それはさておき、作家のデビュー作あたりは、それまでの持ちネタで勝負することが多いのは確かだろう。経費で取材をすることはできない以上、それまでの経験や専門性で勝負することが多くなるからなのだと勝手に考えている。

 デビュー作でなくても作者のバッググラウンドが透けて見える作品はけっこうある。

 貴志祐介の長編二作目は著者の仕事の経験がふんだんに盛り込まれている。上橋菜穂子は人類学者だし、ル=グウィンは人類学のプリンセスだ。ハードSFになると例が多すぎて選ぶのが難しいなんてことになりそうだ。


 作品を読むとき、そういう背景を想像しながら読むのも楽しい。

 もちろん、その想像は私の思いつきであって、本当にそうかはわからない。でも、楽しいからいいのだ。


 作家としては大好きだが、身近にいたらつきあいきれないだろうなという人もたくさんいる。というか無頼派とその後継者たち的な作家は皆そうだろう。

 たとえば、西村賢太は大好きだ。小説からにじみ出る苦悩、芥川賞をとったあとの日記から垣間見える俗物的な部分等含めてすべて好きだ。でも、近くにいたら、私みたいなやつは会って数分以内に怒鳴られるか殴られるか、怒鳴られて殴られるに違いない。

 『堕落論』は私の生涯のバイブルの一つである。坂口安吾の後輩になりたいというのが、フランス語やラテン語に手を出した(ヒロポンには手を出していない)理由の一つだ。しかし、この人が実際そばにいたら嫌だなぁと思う。

 絶対に会いたくないけれど会ってみたい。そんなふうに思わせてくれる作家たちというのはすごいものだなと思う。

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