スプモーニ:カンパリとグレープフルーツジュース、トニックウォーターに無駄な努力

 カンパリオレンジはカンパリをオレンジジュースで割った定番カクテルである。

 スプモーニもベースはカンパリだが、グレープフルーツジュースを足し、トニックウォーターで割ったものである。


 バーでメニューを見ないで頼めるようになろうと道具一式にカクテルレシピとリキュール、スピリッツを買い漁ってシェーカーを振ったことがある(なお、スプモーニはステアカクテルなのでシェーカーはいらない)。

 動機はいつものとおりだ。シャカシャカとシェーカーをふるうところを異性の前で見せたり、バーで何を頼んでよいかと迷う異性に「こんなの美味しいよ」と言えたらモテるのではないかと思ったからである。

 当然、これも外したわけである。

 本当に殴り倒してやりたいバカ野郎である。


 スプモーニをおぼえたのも、飲みやすい系統のロングカクテルを聞かれてカンパリオレンジと言ったらありきたりだし、スクリュードライバーと言ったら怪しまれそう(注)だしという理由である。

 もちろん、お酒は苦手という子のためにシャーリーテンプルとかどう? カクテルグラスに入っていて雰囲気が出るのがいいならシンデレラも良いねとか言えるようにしておいた。

 うん、キモい。とても気色が悪い。さらって山の中とかに埋めたほうが良いやつがそこにはいたわけだ。

 ただ、幸いなことにあたりまえだが、それを聞かれて私が間接照明の中、映画版シャイニングのジャック・ニコルソンの有名なシーン顔負けのやばめのドヤ顔をさらす機会はほとんどなかった。


 結局、シェーカーその他はどうなったかというと、それなりに活躍はした。

 夜中に一人、アメリカの恋愛ドラマを見ながらカクテルをすする根暗な大学生のお供として。

 涙を流しているのは安っぽい恋愛ドラマに感動しているからであって、自分の暗い人生をひがんでいるからではない。断じてちがうのだ。


 そういうことにしておいてほしい。


注:スクリュードライバーは、その口当たりの良さとアルコール度数の高さゆえに邪な心で女性に酒を勧めるよからぬ輩御用達なんてひどい噂があったのです。

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