きみのひとみにかんぱいの巻

アラウンド・ザ・ワールド:世界を旅する

 たしか定期テストの前だった。

 数学の参考書を買いに行った本屋でのことだ。

 なんとはなしに手に取った本を数冊、参考書とともに買い求めた。


 息抜きにめくろうと思った本は息抜きにならなかった。息抜きというものは、前後に何かしらの学習や労働を挟まないと息抜きにならないからだ。『深夜特急』という本に魅せられた私は数学の参考書を触りもせずに朝を迎え、そして赤点をとった。

 無論、テスト直前に参考書を買いに行っている時点で赤点は約束されたものであったが、それについては何も言わない。

 もう少ししっかり勉強しておくべきだった、案外数学も面白そうではないかと思ったのは後々のことである。


 まぁ、なにはともあれ、それ以来、バックパッカーに憧れた。旅行人系の書籍を読み漁ったりした。

 ただ、私はとても臆病で自分自身がバックパッカーになることはなかった。バックパックも持っていない。

 訳あって、バックパッカーもなかなか見かけないような国でバックパッカーと出会うことはあったものの、やはり拠点を定めて住んでいたし、荷物はトランクに詰めていた。


 そこでは軍人に銃を突きつけられるようなことやら賄賂を要求されるようなこともそれなりにあって、それはそれでなんとか切り抜けたりしたものの、臆病で小心者の私はそのたびに多大なストレスを感じていた。本で読んだバックパッカーたちは大抵の場合、飄々と切り抜けていたが、私は彼らほどタフではなかった。

 だから、バックパッカーたちの旅の記録や冒険旅行について読むくらいでちょうど良いのかもしれない。

 皆様におかれましては、世界を旅して、その見聞をたくさん書いていただきたく。

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