ひつまぶし:ひまつぶし

 貧乏暇なし。それが全面的に正しいわけではないことを私は知っている。多少の暇ならば私にだってあるからだ。

 よくよく考えてみると私の中では暇というのは二種類に大別される、あるいは大別されていたようだ。

 すなわち、耐えられる暇と耐えられない暇である。


 耐えられる暇の代表的なものとしては自宅でぼけっとしているときである。

 これはいくらあっても良い。

 本を読んでいても良いし、書きものをしていても良いし、ゲームをしようとしていても良いし、何だったらぼけっと座って膝の上に乗っかってくる犬を撫でていても良い。

 

 耐えられない暇というのは、待ち時間の類が主なものである。

 銀行で役所で携帯電話販売店で、番号札をにぎりしめて待ち続ける時間というのは苦痛で仕方がなかった。

 自分の番号を気にしながらでは本に没頭もできない。

 ただ、そのような暇は今や絶滅危惧種となった。

 スマートフォンのおかげである。

 これ一つでぽちぽちと気になったところを検索していると本当にあっという間に時間がすぎる。集中も没頭もぜずにただただ暇を潰すことができる。


 文明の利器万歳。

 

 ただ、問題はスマートフォンはあまりにも強すぎる、あるいは私の意思があまりにも弱すぎることだ。耐えられる暇にもぽちぽちがどんどん侵出してくる。

 なまぬるい快楽の中で様々なものを身につけるために訓練している若い人を見ると偉いなぁと思う。

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