どじょう豆腐:もぐりこむ

 太郎丸(仮名)はかけ布団の中に潜り込むのが好きだ。

 布団を敷いてくれと催促して、その願いがかなった後は飼い主を待たずに勝手に布団の中に潜り込んでいる。

 尻をあげて鼻先で器用にかけ布団をめくり、その中に入っていく。豆腐の中に入っていく泥鰌(見たことはない)のようである。


 一方、次郎丸(仮名)はかけ布団の中にもぐりこむことができない。

 だから布団の中に潜り込みたいときは布団横でかけ布団をめくれと催促する。

 

 問題は夜中である。

 夜中であっても布団に潜り込みたくなるときはあるだろう。

 飼い主に寄り添って寝たいという彼の気持ちは当然とても嬉しいものだ。

 しかし、ここに問題がある。


 次郎丸(仮名)の爪はどういうわけか鋭い。

 犬の爪というものは散歩で削れるもののはずだし、実際、太郎丸(仮名)はしっかりと削れている。

 散歩は常に二頭一緒に行っているし、そもそも途中で歩くのが面倒になったから抱っこしてくれとせがむ太郎丸(仮名)よりも次郎丸(仮名)のほうがたくさん歩いているはずだ。

 それなのに彼の爪は鋭い。

 さらに彼は肩関節の可動域が犬とは思えないくらいに広い。

 可動域をフルに活かした彼のパンチは結構な威力がある。

 太郎丸(仮名)に投げられ続けてグラップラーではなくストライカー志向になった彼は連打も得意だ。


 夜中、寝ている私の顔面に叩き込まれる犬パンチ連打。

 せめて単発にして欲しい。すぐ起きるから。

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