かっぱのかわながれの巻

鮒ずし:釣り

 犬を飼い出す前の話だ。

 釣りをしてみようと思った。

 釣りは子供の頃以来だった。


 子供の頃は、クチボソ(注)をよく釣っていた。

 たしか百円の竿と百円のアカムシさえあれば、バケツ一杯連れた。

 釣り好きの大人たちはヘラブナをねらっていた。

 アカムシを買いに行く釣具屋で飾ってあるヘラブナ釣りの竿はどれも数万円以上するものだったことをおぼえている。

 

 大人になった私が最初にやったのはワカサギ釣りだ。

 北海道に旅行した際、長年の夢であったワカサギを釣ってその場で食べるというのを実現することにした。

 私の行動の動機には常に食欲がある。

 とはいえ、右も左もわからないので、そういうツアーに申し込んだ。

 ホテルまでの送迎付き、竿も貸してくれるツアー。

 ほとんど釣れなかったが、揚げたてのワカサギは美味かった。


 その後、堤防でサビキ釣りというものをしてみることにした。

 アジを釣って食べたい。繰り返すが、私が何かをするとき、動機は常に食欲である。

 アジフライ、アジの刺し身、ナメロウ、そう思って安めの釣具セットを買って、旅先で漁協が管理している有料の釣り場にいった。

 

 小サバとネンブツダイしか釣れなかった。

 揚げると美味いんだ。

 近くにいたベテラン釣り師っぽいおっちゃんのことば通りに揚げて食べた。

 アジにはありつけなかったが、まぁ、それなりに満足した。


 しばらくして太郎丸(仮名)が家にやってきた。

 犬を釣り場に連れていくことなどできるわけもなく、釣り竿は物置で眠っている。

 

 後年、クチボソは甘露煮にして食べられると知った。

 もったいないことをした。


注:クチボソというのは私の出身地のあたりの方言らしく、正式にはモツゴというらしい。

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