なーろっぱめしの巻

スライムのジュレ:スライムは弱くない

 ファンタジー世界になくてはならないぐらいの存在になったスライム、今や愛くるしい存在とされているあれはホラーの産物である。

 私はてっきり”The Blob”(1958)という映画が初出くらいに思っていたのだが、Wikipedia先生によると、どうも『沼の怪スライム』(1953)なる小説のほうがはやそうである。

 どちらがはやいかは別にしても、ホラー産のスライム的存在はどちらもそれなりに危険そうだ。

 間違ってもレベル1の勇者に棍棒でしばき倒されそうな存在ではない。

 レベル1なんぞ粘膜で包み込んで捕食されておしまいな強さのはずだ。

 そう、昔のスライムは強かったのである。

 人の様々なものを捕食する恐ろしい怪物だったのだ。


 その恐ろしい怪物はおもちゃになっていたこともある。

 私も幼稚園の頃、買ってもらった。

 これで遊んでいなさいと、スライムを持たされて友人たちと部屋で遊んでいたことをおぼえている。

 母親たちは買い物に行ったのかもしれない。

 信じられないが、そういう時代だった。

 子どもたちがいたずらをしないように流行りの危険性のないおもちゃを買い与えて、しばらく時間を稼ぐ。


 母たちはスライムの強さを知らなかったようである。

 買い物袋をぶらさげて帰ってきた母たちを出迎えたのは、頭をスライムまみれにしてケラケラと笑う子どもたちの姿であった。

 スライムは洗っても落ちず、子どもたちの髪の毛は捕食されることになった。

 虎刈りになった子どもたちはケロリとしていたが、母親たちはそれなりにダメージを負っていたようである。


 やはりスライムは強いものだ。

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