イクラ:君の値段

 コロナ禍で愛玩動物の値段があがったのだそうだ。

 うちでは三頭目を迎える余裕はないので、値段を気にしたことはなかった。

 親族からの連絡でそのあがりっぷりを知った。

 犬飼いには犬種にこだわらない人と一つの犬種に惚れ込む人がいて、私は後者である。

 太郎丸(仮名)も次郎丸(仮名)も実家で飼っていた菊子(仮名)、貫太郎(仮名)もみな同じ犬種である。

 それゆえに太郎丸(仮名)と次郎丸(仮名)をともなって実家に行くと大歓迎される。人間よりも歓迎される(注)。


 「おい、君たち、今、四十万円以上らしいぞ。倍額だよ、倍額。売るか売るか?」

 なにをいっているの? ボクを売れるとでも思っているの? そんなことよりはやくボール投げてよ。

 次郎丸(仮名)のパンチが私の顔面をとらえる。太郎丸(仮名)は耳をぴくりと動かしただけで私の横で気持ちよさそうに転がっている。


(注):いつものように話を盛っているうちに、少し正確ではない表現をしてしまった。人間でもカジンは大歓迎されるので、私以外は大歓迎されるというのが、正確な表現である。私が実家でどのような扱いを受けているかについてはここでは書かないが察して欲しい。

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