エール:間違えてはいけない

 ファンタジー小説、ゲームではおなじみのエール。

 ゲーム以外では昔はなじみがなかった。アイリッシュパブみたいなところにでもいかない限り目にすることがなかったお酒。しかし、最近ではインディアンペールエールの普及でエールの名前もよく聞くようになった。

 対抗戦とかで相手チームと交換するアレもエールだが、両者はもちろん別物である。

 間違えてはいけない。

 にもかかわらず、私の近くにはわざと間違えたふりをする悪質なバカが私を含めてきわめて多かった。


 ものすごく季節外れであるが、右大臣が顔を赤くする白酒、あれは濁り酒に近い醸造酒らしい(正確には味醂など混ぜるらしい)。

 醸造酒である以上、そこまでアルコール度数は高くならないはずである。

 右大臣も「赤いお顔」ぐらいで済む。


 ある年の三月、一人のバカが酒を持ってあらわれた。

 伝統を大切にしよう。

 そう言い放つバカが手にしている瓶は白酒であるがシロザケではない。白酒バイジウという蒸留酒である。

 アルコール度数五〇度以上とかいう半端な気持ちで手を出してはいけない代物である。


 酒瓶とコップをかかげたバカが歌い出す。

 「すぅーこしぃめされたかーぁ!」「はい! っはい! はいはいはいはいっ!」

 ひな祭りの歌を一気飲み(注)のコールに用いるという伝統は我が国にない。ついでにもう一度断っておくが、バカが掲げているそれはシロザケではない。

 誰かがあげた非難の声にバカの一人が「創られた伝統がぁー」と訳のわからないことをまくしたてている。

 バカはバカのくせに妙なところで博識である。非難の声をあげたやつも一杯飲むと歌い出す。あいつもやはりバカである。

 そしてバカたちはしこたま酒を飲む。

 

 「その酒でイッキ」と君が言ったから三月四日はカラダ無惨日


(注)一気飲みとか危険だからやってはいけません。おにいちゃんおいちゃんとの約束だよ。この話も当然いつものようにホラ話だからね。

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