かけつけさんばいの巻

ミード:魔法のアイテム

 電子メールが一般に普及していないところに旅したことがある。

 無論、そこでも新しいもの好きの人は自分のメールアドレスをしっかりと確保していたし、日本ではとうの昔に普及していた。

 私が外国語を習うときにもその単語は出てきた。


 ちなみにこの外国語は外来語をあまり良しとしない。

 おかげで覚える単語量が少なくて良いので助かるのだが、それでも面倒くさいものもあった。

 ウォークマンはだめよbaladeur、コンピュータとかいうんじゃねぇordinateurだ。

 e-mailも当然駄目で、教科書にはたしかcourrier électroniqueという語が用いられていた。


 とはいえ、単語を忘れるなんてのはしょっちゅうであるし、そもそも滑舌が悪い私にとって、courrier électroniqueというのは憶えていてもどうも発音しづらい。無理やり読みがなをふるならば、「くひええれくとほにく」みたいな感じになる。私が発音すると、続いて、「いあ! いあ! くとぅるふ ふたぐん!」とか唱えはじめるのではないかと誤解されそうだ。

 だから、旅先で出会った人と話しているときも、普通にe-mailという単語を使っていた。

 

 会話が終わったとき、横で聞いていた別の知り合いが不思議そうにたずねてきた。

 

 「なぁ、レン、その手紙よりも速く届くイーミエルってのは、どんな蜂蜜ミエル(miel)なんだ?」

 勘違いというものは時に素敵なものを生み出す。


 魔法の蜂蜜、いつの日か、ファンタジー小説で使いたいアイテムである。

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