フォルマッジオ:病院好き

 うちの犬たちは病院が好きである。


 以前私が接した犬たちはおしなべて病院が嫌いであった。

 「病院」という言葉を聞いたら逃げ出す、それらしき気配を感じたら逃げ出す。

 病院についたら車から降りないと抵抗する。

 「ここまで来たからこれくらいで今日は帰ろう」と診察室前で抵抗する。

 「乗らないよ? 乗らないよ!? 乗るもんかこのやろう!」と診療台の前で抵抗する。診療が終わる頃には落ち着いているが精根尽き果てた感があった。


 それがこいつらはよくわからないが、「病院」というと尻をぶんぶんと振りながら寄ってくる。

 車に率先して乗る。病院のそばに来ると、興奮して吠えだす。もちろん着いたら率先して病院にも入っていく。

 看板犬とひとしきりじゃれて遊ぶ。

 呼ばれると尻をふりながら診察室に入っていく。

 なじみの獣医さんにぶりぶりと尻をふって挨拶をする。

 狂犬病の予防接種も混合ワクチンもきゅんとも言わず、終わった後にもらうご褒美のチーズを食べている。毛並みを褒められてドヤ顔していることもある。「またくるぜ!」と言わんばかりに尻を振ってから笑顔で退室する。


 たまにこいつらは犬ではなくて宇宙人なのではないかと思うことがある。

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