アンティパスト:コロッケ丼

 コロッケが好きだ。

 コロッケは万能選手だ。

 軽食によし、おかずによし、蕎麦にもカレーにも合う。

 そのまま食べてもよし、ソースをかけてもよし、ケチャップだって美味しい。蕎麦に放り込めるくらいだから醤油でもいけるのではないか。


 昔、コロッケ丼というものをせっせと作っていたことがある。

 もちろん、私がそのような行動を取るのは本で読んだからである。


 椎名誠『哀愁の町に霧が降るのだ』、手元に本がないのでうろおぼえだが、沢野ひとしがカツ丼やコロッケ丼に言及する場面があった。

 高校生になって立ち食いそば屋に入ることをおぼえた私はコロッケそばなる代物を好んで食べるようになっていた。コロッケと出汁の効いたつゆの相性の良さを知っていた私がコロッケ丼に惹かれるのは必然と言えよう。

 絶対にうまいと思って作り続ける。


 ただ、コロッケ丼はなかなか難しい。

 カツ丼のカツをコロッケに変えただけであるが、カツとコロッケは強度が違う。

 すぐに煮崩れてしまう。かと言ってすぐに火からあげたら味がしみない。

 確か本ではカツやコロッケは肉屋で買ってくることになっていたから、コロッケ丼専用コロッケを揚げるということでもなさそうだ。

 どれぐらい煮ればよいのか。

 私が想像した理想のコロッケ丼はなお遠い。


 『哀愁の町に霧が降るのだ』を読んでコロッケ丼にチャレンジした方はぜひともレシピやコツを教えていただきたい。

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