しゅちにくりんの巻

アペリティーヴォ:酒造りとにおい

 酒造りというのは楽しいものだ。

 といっても本当にお酒を造ったり(注)すると、しょっぴかれてしまうので、買ってきた酒に果物を漬け込むぐらいだ。


 実のところ、このあと酒にまつわる名文が続いていた。まぁ、その文章はもはや人の目に触れることのないものだから、いくらでも話を盛れる。皆が私に惚れ込むくらいの名文が続くはずだった。もしかしたら、エッセイストデビューができたかもしれない。しかし、後々気になって調べてみると、多少まずいところがあった。それゆえにあの名文が日の目を見ることはない。代わりに犬の話をしよう。


 折々触れているが、私は太郎丸(仮名)と次郎丸(仮名)という二頭の犬を飼っている。

 生き物である以上、彼らも腸内からガスを放出する。彼らは尻を飼い主にくっつけるのが好きなので大抵の場合は至近距離である。遠慮なく。あるいはプッププップとリズミカルに放出する。

 それはかまわない(臭いけど)。愛があれば愛犬の放屁だってかわいいものだ。

 夜、私の布団には次郎丸(仮名)が入っている。私はきわめて上品な人間であるが、それでも生き物だ。なんか出てしまうこともある。すると次郎丸(仮名)はむっくり起き上がって布団を出ていくのである。そして、不機嫌そうにこちらを見つめるのである。お互い様ではないのか。そこに愛はないのか。

 太郎丸(仮名)はそのようなことはしない。しかしながら、彼は彼でけっこうひどい。太郎丸(仮名)が音をだしてしまった場合、彼は飛び起きる。きょろきょろとして「今、変な音したよね? えっ? 僕? 僕関係ないよ。やめてよね、変な音たてるの」という顔でこちらをじとっと見る。君の鼻ならば臭気が自分の尻から立ち昇っているのがだろうにどうしてこちらを見るのだ。どうして罪をなすりつける気満々なのか。

 

 爽やかな名文がのるはずだったのに臭い話となってしまった。すべて酒税法が悪いと法に罪をなすりつけて、今回の駄文は終わる。


注:異世界ファンタジーで出すお酒に困っているという方は、農山漁村文化協会が出している書籍をあたってみてください。あんなのもこんなのもゲームでおなじみのあれとか全部作れるらしいですよ。

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