点心:油から脂、餃子からドーナツまで
実家ぐらしの頃、餃子は家でせっせと包むものであった。幼い頃はよく手伝ったものだ。
それなりに健康に気を使っていたであろう母の餃子はヘルシーであったが、それほどそそられるものではなかった。
一人暮らしを始めた頃、少しだけ財布に余裕があって、自炊するのが面倒なとき、おっかなびっくり近くにあった有名チェーン店に入った。
べたべとする床をぺたりぺたりと歩く。床の油に負けて靴底が剥がれるのではないかと心配になる。カウンターに座る。机もメニューもべたりとしている。
店名にも入っている看板メニューとビールを頼む。
イーガーコーテルという不思議な詠唱が店内に響く。
出てきたものは実家で食べていたものと全く異なる皿に油が染み出たどぎつい代物であった。
ビールでせっせと流し込む。凍っているのではないかという生ビールが油を洗い流していく。そして、また餃子を口に放り込む。
胸焼けするようなどぎつさが私の舌と胃袋を刺激した。
気がつくと、週に一度通うのが楽しみになっていた。
一人暮らしのわびしい食卓では満足できないものを満足させてくれる油。
いつの日か、深夜寂しい時、ドーナツ屋でコーヒーを飲みながら、本を読むようになっていた。
あんな油っこいものが食えるかと嫌っていたドーナツがやたらと美味かった。
このような生活での摂取カロリーが大変なものであることに気がつくのはしばらく後、体格がレベルアップしてからのことである。
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