湯:犬を洗う

 犬は自宅で洗っている。

 長毛犬ではないので楽だ。

 洗って、肛門腺を絞る。

 タオルドライ係にあずけて、もう一頭を洗う。

 同じ犬種であるのに手触りや泡立ち方が違うのがなかなかおもしろい。


 彼らが風呂好きなのか風呂嫌いなのかはよくわからない。

 昔はぬるま湯に一緒につかってくれたものだが、最近は一緒につかってくれない。

 とはいえ、洗われる最中に抵抗もしない。案外気持ちよさそうにしている。

 タオルドライ後はテンションがあがるようでひとしきり家の中をかけまわり、とっくみあいをしている。

 電池が切れたように寝る。


 まぁ、それなりに気分は良いのだろう。

 翌日は満面の笑みだ。

 満面の笑みで散歩に出かける。

 そして、彼らは砂の上、芝の上で転がるのだ。そう満面の笑みで。


 「臭いと布団から追放されて洗われた僕たち。洗われてみたらふかふかの毛となって公園の人気者! 今さらとめてももう遅い! 僕らはスキル【転がりローリング・サンダー】で芝犬になります!!」


 お前ら、二日連続洗ったって良いんだぞ。

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