魔女
轟音、爆風。
結界を張ったのにも関わらず、防ぎきれなかった衝撃に体が浮きそうになる。
数メートル先にいた少女――魔女がいた場所は今は煙と光に包まれており、生死の確認が難しい状態となっている。
が、手元の装置を見れば魔女が生きており、また削りが足りないことも同時に理解できてしまう。
「次の攻撃の準備をしろ! まだダメージが足り――」
「酷いね、話も聞かずに発砲なんて」
魔法式過銃砲、所謂魔砲による攻撃。
理論上耐えられる物質が存在せず、また魔法による防御も不可能とされるそれを二十発。
殺人に特化した血も涙もない掃射を喰らって、しかし魔女は余裕の表情であった。
その服も、顔も、髪も、体の何処にもダメージを確認することは出来ず、攻撃前と変わったことといえば、その手に先端が砕けたステッキを持っていることぐらい。
「どうやって防いだ…!」
「普通に、結界で」
「撃て!」
第二射。
早々に会話を切って放ったそれを、魔女は防ぐ。
そして、今度は見ることが出来た。
無造作にステッキが振られ、結界が五重に展開される。全てを貫く銃弾は五枚目の結界を破壊することが出来ず、そこで残りの魔力を爆発させた。
二重の展開ですら天才とされる結界の複数展開、それを五つ、更に高強度で。
超絶技巧、などというレベルではない。
理解を越えた異常な技量だ。
だが、想定内。
「で?」
「次だ! 放て!」
魔砲は通用しない。であれば次だ、手札はまだまだある。
つまらなそうにこちらを見る魔女に向かって四方八方から魔法が放たれる。
空間収容、対象の周囲に魔法の壁を作り、拘束する非殺傷魔法。
強度は折り紙つきで、核爆発ですら突破できないほどのもの。
成功すれば、幾ら魔女でも脱出には時間がかかるだろう。成功せずとも、多少の時間が稼げるだろう。
そんな想像、希望的観測は、一瞬後にはただの妄想となった。
「反射」
「待っ――」
魔女の周囲に展開される魔法陣。
ぶつかり、キン、と音を立てて跳ね返る魔法。
結界ならば魔法が発動していた。攻撃魔法でも同様に起動し、何かにぶつかれば当然術式は開放されていた。
その穴をつかれた。
術者達は何とか魔法を避けたが、代わりに街路樹が囚われることとなった。
「次は?」
魔女に消耗した様子はない。
反射は想定外だった。
しかし、体力を削ることは出来なかったが、もう一つの目的である時間稼ぎには成功した。
今度こそ当てる。
「射て!」
叫びに反応するものはない。
魔女も怪訝な表情を浮かべ、周りに視線を巡らせている。
数拍後、その顔は驚きに染まった。
十キロ以上離れた空から飛来した魔法の弾丸が、魔女へと突き刺さった。
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