独りぼっち

 ゴロゴロと唸る曇り空が、憂鬱な私の心を更に暗いものにする。

 荒れる魔力の影響か、正午を過ぎたばかりだというのに辺りは夜のような闇に落ち、立てられた街灯が頼りない光でそれを照らしている。


 私は一人、暗闇の中を拠点目指して歩いていた。

 付き人も居るにはいるのだが、大事なときにしか姿を現さないし、居たところで楽しく話せるわけでもない。

 居ても何も変わらないのなら、それは居ないのと同じだ。


 思わずため息が出そうになるが、すんでで飲み込み抑え込む。代わりに頭を痛いぐらいに掻き回せば、苛立ちは何処かへいってしまった。

 もう十分もすれば拠点に着く、それまでは頑張ろう。


 未だに慣れない孤独に耐えつつ歩いていると、一瞬空が白く光る。

 数秒後にゴロゴロと音が聞こえ、雷が落ちたことを知らせてきた。


 私はため息をはく代わりに舌打ちする。

 あともう少しで帰れたというのに、実に迷惑なことだ。そうやって光られると、無駄な面倒が増えてしまうじゃないか。


「動くな」


 背後からくぐもった声が飛んでくる。

 案の定だ。私はその声に振り返る。

 すると、周りが急に明るくなり、私の姿が顕となってしまった。

 隠す気も起きず、そのまま相手の言葉を聞く。


「青い髪、青い瞳、そしてその制服。お前がだな?」

「違うって言ったら、信じてくれるの?」

「撃て! 絶対に逃がすな!」


 指示を出すためか、魔法かなにかのフィルターが取れ、女性のものだと分かる高い声が辺りに響いた。

 直後、そこら中からガシャガシャと物騒な音が聞こえ、そして、


 ドン


 と、重い銃声が複数、重なって響いたのだった。

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