第11話 ありがとう
光る剣からいぐさの匂いがして、疑問に思うより大の字になって横になりたくなった浩輔であったが、一角ペンギンの出現によりのほほんとした気分は一掃されてしまった。
「ぎゃー!!!」
両の手を上げて逃げようとした浩輔の目に、不敵に笑う海斗の姿が入った。
瞬間。
浩輔は一角ペンギンに向かい合い、水鉄砲を構える一角ペンギンに向かって、光る剣を構えながら突進した。
まるで光る剣が導いてくれるようだ。
どこを狙えばいいのか。
どう攻撃したらいいのか。
「あああああああ!!!」
浩輔は吠えた。
人生で初めてだった。
小波が忙しなく行きかうように震える全身を制して、横一文字に切るように一角ペンギンの一角に光る剣をぶつけた。
勢いよくぶつけただけだ。
斬ってはいないし、負傷も与えていない。
どうやら見た目よりやわらかい素材でできているらしい。
一方、光る剣を一角にぶつけられた一角ペンギンは一瞬、目を見開き、動きを止めたかと思えば、構えていた水鉄砲を厳かに、静かに地面に置くと、一角ペンギン自身もまた地面に座り、大の字になって横になった。
殺気が解かれたその顔は、とても穏やかなものになっていた。
「クッククク。それがおまえの力。光るいぐさ剣。俺と同じ癒しの力だ」
「マジか?」
「おう」
「癒し」
「おう」
浩輔は無言で、けれど叫んでいそうなとても熱いガッツポーズを地にも天にも掲げた。
これでほのぼの路線に行けるぞ!!!
汗、涙、血を流す激闘なんて、ぼかあ望んでいません!!!
ほのぼの!!!
これに限ります!!!
癒し、さいっこう!!!
自分も相手も傷つかない傷つけない!!!
いぐさ、さいっこう!!!
ありがとう!!!
じっちゃんばっちゃん!!!
あなたたちの家で過ごした時間があったからこそ、この力を手にすることができました!!!
ありがとう!!!
ありがとう!!!
(2023.5.31)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます