第85話 熱い夜
【性描写多めかもしれません。苦手な方はご注意ください】
母さん達を追い出して、栞と2人きり……
母さん達にもこれからのことはバレてるはずなのに、もう栞のことしか考えられない。栞の潤んだ瞳が俺を狂わせてしまうんだ。
真夏よりも涼しくなっているはずなのに、今日はいつもよりも暑い気がする。
「涼……私、もう我慢できないんだけど……」
「とりあえず俺の部屋、いこっか」
心臓がこれ以上ないほど暴れてるのがわかる。それはきっと栞も同じなはずで、それを繋いだ手から感じながら、初めての日と同じように2人で階段を上った。
本当に夢中すぎると思う。栞と身体を重ねた回数なんて、まだ片手で数えられるくらいしかないはずなのに。ただの性欲とはまた違う欲、なんだと思う。自分1人では処理しきれない。それなのにただ栞と触れ合うだけで少しだけ満たされる。今はそれ以上に深く満たされるために俺達を隔てるものが邪魔なんだ。
けど……物事には順序や準備というものが必要なわけで。
「えっと……風呂とかシャワーとかは?」
風呂場は階下なのに今更こんなことを聞く俺は本当に不器用なんだと思う。
「後でいい……というか後がいい……だって涼の匂いに包まれたいもん」
「そっか……」
やっぱり匂いフェチ……いや、今はいいか……
それよりも少し気になることがある。
「ねぇ、栞?最近すっごく積極的だけど……もしかしてハマっちゃった?」
栞はボフッと音がしそうな勢いで顔を赤くしてしまった。
「栞……?」
「バカッ!そんなこと聞いたらダメなんだよ!」
「いや、だって……」
「しょうがないじゃん!あんなに幸せな気持ちになれること他に知らなかったんだから……ハマりもするもん!私だけなの?涼は違うの?」
「い、いや、俺だってそうだけど……」
俺だって心も身体も栞を求めて止まないんだから。ただあんまり明け透けにするのが恥ずかしかったのと、あんまりがっついて呆れられたらって心配だっただけで。
「だったら戸惑わないでよ。私だってお母さん達にバレてるのは恥ずかしいけど……それでも抑えられないくらい涼を求めちゃうんだから」
「わ、わかったよ」
「ん、よろしい。まぁ、ハマっちゃったって言っても気持ちいいとかっていうのはまだよくわかんないんだけどね?」
つまりこれまでは栞を満足させてあげられていないということで、ちょっと情けないななんて思ったり。
「じゃあ俺も勉強しないと、かな?」
「んーん、いいの。2人で手探りで、がいいな。いきなり手慣れたことされたら心配になるし、私も追いつかないから。今はね、優しくてちょっぴり不器用な涼を感じたい、かな。その方が私は嬉しいよ?」
そうだ。変わるなら隣で見せてって言ったのは俺だった。焦らなくていい。ゆっくりでもいいから2人で。それは俺達の大事な約束なんだ。
「ね、涼?ギュってして?」
「うん。ほら、栞。おいで?」
これも付き合い出したときからの約束。俺にはよくわからないけど、こう言うと栞はすごく嬉しそうな顔をしてくれる。思えば栞との間にはたくさんの約束事ができたものだ。
物思いに耽りながらも、飛び込んできた栞を抱きとめると、「はぁ」と幸せそうなため息を漏らしてくれる。
「やっぱりここが……涼の腕の中が私の居場所なんだなぁ……心臓はすっごくドキドキしてるに、心はこんなに満たされるんだもん」
「俺もだよ。でも……今はちょっと我慢の限界、かも」
「もう……ムードも大事なんだからね?けど、いいよ。あんまり我慢させたら可愛そうだもんね?」
「ごめん……」
「ううん。誘惑しちゃったのは私だし、そこは彼女として責任とらなきゃだもんね?」
「お世話かけます……」
「いいよっ。その代わり涼が私のことどう思ってるのかたくさん聞かせてね?」
それくらいならお安い御用。もうやめてって言われても何回だって言ってやるつもりだ。
「好きだよ、栞。大好き」
「私も涼が好きっ」
栞が目を閉じるのに合わせて唇を重ねる。それはやがて啄むようなものに変わって、どんどん熱を帯びてくる。もうこうなると理性なんてないに等しいけど、今日はちょっとやってみたいこともある。
朝の仕返し。あれでどんな気分を味わったのか栞にもわかってもらわないと。
キスを一旦中断して栞を深く抱き寄せると丁度いい位置に栞の耳がくる。まずは前置き。くすぐるように耳元で囁く。
「栞、好きだよ……」
それだけでピクッと反応してくれる。
「んんっ……りょ、涼?ちょっとそれ……」
栞の言いたいことはわかっているけど、あえてとぼけることにする。だって、反応が可愛いすぎるから。
「ん〜?なに?」
「あぅっ……ダメッ……」
「ダメ?なんで?たくさん好きって言ってほしいんでしょ?」
「うぅ……いじわる……これ、ゾワゾワ、する、の……」
少しやりすぎてしまったようで、この段階ですでに栞はヘロヘロになってるけど、ここからが本番。俺は栞の可愛らしい耳にカプリと噛み付く。さっきよりも大きくビクッと反応してくれるのが嬉しくて、そのまま栞の耳に舌を這わす。
「やっ……それっ、ダメッ。力、抜けちゃうから……もう立ってられなくなっちゃうっ」
ついにはその場にへたり込んでしまった。
「涼……どこでこんなの覚えてきたの……?」
「朝、栞にされたことの仕返しなんだけど?」
「私ここまでしてないもん……」
「調子に乗りすぎちゃったのは悪かったけど……もう朝からこんなことしたらダメだよ?朝から栞のこと襲っちゃうかもしれないからね?」
「いいもん。その前に……涼が起きる前に私が涼のこと襲っちゃうんだから!」
いや、それはどうなんだ……?
注意するはずが、より悪い方向にいこうとしてる。そうなれば2人揃って遅刻……ならまだマシで、母さんにでも目撃されようものなら。うん、考えたくもない。
「とにかく!これからは起こすなら普通にね?」
「うー……わかった。でも……今の、ちょっとクセになっちゃうかも……」
栞のつぶやきを聞いて、これはダメかもしれないな、なんて思った。
これがきっかけで、仕返し目当てでたまに栞があの起こし方をするようになるのは、もう少しだけ先のお話。
「ねぇ、涼?包装、解いてくれるんだよね?」
この言い方もずるい。栞自身が贈り物なわけで、こんな素敵な贈り物受け取らないわけにいかないんだから。そうじゃなくても、もう止まれやしないけども。
「うん……それじゃあ」
栞の服を1つずつ丁寧に剥ぎ取っていくけど、少し手が震えてしまう。こういう時もっとスマートにできればとは思うけど、今は不器用でもいいと言ってくれる栞に甘えることにする。
全て脱がせ終わった後はしっかりと目に焼き付ける。贈り物だもんね?ちゃんと確認しないといけないよね?
「綺麗だよ、栞」
「うっ……嬉しいけど、恥ずかしいからあんまり言わないで……というか、私だけずるい。涼も……」
今度は栞が俺の服を剥ぎとってくれる。
そうしてお互いに身に着けているのはリング付のネックレスのみとなった。
その後はまた固く抱き合って、体温を確かめ合って、キスをして。もうこれだけで8割くらい満足してしまった気がする。
けど栞はそうじゃなかったようで。
「今日は涼の
栞の言葉が一々俺をおかしくさせる。こんなおねだり応えないわけにいかないじゃないか。
白い肌に強く吸い付いて、いくつも痕を残す。栞は痕が1つ増えるたびにうっとりした顔で確認して、愛おしそうにそれを撫でる。
そんな姿を見せられたら、気が狂いそうなほど興奮してしまって、思わず押し倒していた。満足しかけてたなんて完全に気のせいだった。
「栞、俺もう……」
「ごめんね?焦らしすぎちゃったね。ほら、いいよ。涼、おいで?」
その言葉に誘われるように、手早く準備をして、栞に覆いかぶさっていった。
そこからは……ほら、ね?
最終的には会話らしい会話もなくなって、言葉として成立していたのはお互いに呼び合う名前と『好き』くらいなものだった。
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