第27話 波及
さて、ここでちょっと普段の栞の服装について語っておこうと思う。
これまででちゃんと述べたのは、初めてうちに遊びに来た日と花火の時の浴衣くらいで、どちらもあまりの衝撃に思わず見とれてしまったっけ。
あまり触れてこなかったのは、ファッションに疎い俺なんかが栞の服装についてあれこれ思うのも違うかなと考えていたからだ。しかし今日においては栞の服を俺が見立てることになってしまったので、そのためには普段の姿にも言及しておかなければと思い至った次第だ。
まずこれまでの栞は基本的にパンツルックである。というか制服以外でスカートを履いているのを見たことがない。そして半袖のパーカーやカーディガンを多用している。比較的ラフで身体のラインが隠れる服装が多いように思う。
何故突然、俺がこんなことを考えているのかと言うと、栞に服を選んで試着させて、お披露目してもらった姿に見とれて言葉を失ってしまったからだ。
「涼のえっち……」
俺も男なので、彼女である栞に可愛らしい格好をしてほしいと思うし、胸とか脚とかそういった部分が気になってしまうのは仕方のないことだと思う。しかしこの言われようはちょっとひどいと思う。
誤解のないように言っておくが、素直に栞に似合いそうだと思った服を提案しただけ。別にそんなに露出の多い過激な服を選んだつもりもない。
「スカートは短いし、肩とか腕とかすごい出てるし……」
とか言いながらも、ちゃんと着てくれるのが栞らしい。
俺が選んだのはノースリーブの白いブラウスと、淡い色合いの花柄の膝上丈のフレアスカート。柔らかい雰囲気の栞に似合うと思ったから提案した。実際似合ってもいる。
「ねぇ、涼?聞いてる?」
「ご、ごめん!見とれてた……」
「へ〜、ふ〜ん……涼はこういうのが好きなんだ?」
「いや、まぁ……うん。すごく可愛い、と思います……」
「うぅ……そんなに素直に言われたら恥ずかしいじゃない……でも、それならこれに決めちゃおうかなぁ……」
俺の時とは違ってものの15分程度で決めてしまった。こんなに簡単に決めてしまっていいのだろうか。栞の趣味とかもあるだろうに。
また店員のニヤニヤした視線を感じる……なんでこういうところの店員はそっとしておいてくれないか……
「でもこれだとちょっと恥ずかしいから、上に何か羽織りたいかも……あ、これなんてどうかな?」
栞が手に取ったのは水色のカーディガン。試しにと着てみると、これまたよく似合っている。
「大変お似合いでございます……」
「さっきみたいに可愛いって言ってくれないの?」
「恥ずかしがってたのによく言うよ……というかこれ以上は俺の精神力が限界なので許してください……」
「しょうがないなぁ……」
俺の時と同様にこのまま着ていくようだ。正直さっきの格好で密着されたら理性なんて簡単に吹き飛ばされてしまいそうだったので助かったのかもしれない。
「2人きりになったらちゃんと言ってね?」
……今日のこの子、破壊力高すぎませんかねぇ?俺、許してって言ったよね……?
というか、俺も散々キザったらしいこと言ったような……?今更だけど思い出したら恥ずかしくなってきた……寝る前に思い出して悶絶するやつじゃん!うあー!!
「やーん!しおりん可愛いー!」
「ばっ、彩!声でかい!顔も引っ込めろ!見つかるだろ!」
「ねぇねぇ、遥も私があんな服着たらもっと夢中になってくれる?」
「いや……似合わんだろ……というか俺としては今の彩で十分可愛いと思ってるっていうか……」
「もー!やっぱり遥大好きー!」
「おい!抱きつくな!はーなーれーろー!」
どっかからカップルのいちゃつく声が聞こえてくる。最近耳にした名前も聞こえたような……いや、きっと気のせいだろう……気のせい、気のせい……
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