第13話 普段通りに
「それで話って?」
「例の予定決まったよ。今日から3日後にしたけど大丈夫だったか?」
昨日伝えようとしてやめた内容を告げた。
「うん。大丈夫。家で独りで考えてた時は不安だったけど、涼の顔見たらなんか大丈夫かなぁって」
「俺の顔にそんな効力ないと思うけど……」
「そんなことないわよ?どうなっても涼は私から離れたりしないよね?」
「栞が俺のこと嫌いになったりしなければな」
「なら大丈夫」
今日会ったばかりの時と違って明るい顔をしているから本当に大丈夫なのだろう。ずっと不安そうな顔されてるよりこっちの方が俺も安心できる。
「だからね、当日まで涼も普通にしていて。普段通りに2人で勉強して、次遊ぶ予定でも考えましょ?」
「栞がそういうなら……そうするよ。というか次遊ぶ予定って何か案でもあるのか?」
「夏っぽいことといえば……海とかプールとかかしら……?」
「なんかお互い縁遠い場所な気がするんだけど……それに俺の身体見て真っ赤になってたけど、そういうところ平気なのか?」
「あれはいきなりでびっくりしただけだから……でも確かに私達っぽくはないわね」
「だよなぁ……でもそんなこと言ってたらずっと家でだらだらして終わりそうだな」
「私はそれも嫌いじゃないけどね。人が多いところは苦手だし。あ、でも一度涼をうちに連れてこいってお母さんが。私が涼の家に入り浸ってるからお礼したいって言ってたわ」
確かに夏休みに入ってからというもの毎日のように栞はうちに来ている。逆に俺は昨日送っていった時に黒羽家の前まで行っただけだ。そろそろ一応挨拶くらいはしておいた方がいいかもしれない。ご両親もどんな相手と娘が一緒にいるのか知らないのは不安だろうし。
「ちなみにご両親ってどんな人……?」
なんとなく心配になって聞いてみた。娘が男を連れてきたら最悪お父さんにぶん殴られたり……とかあるかもしれないし……
「どんなって……普通かしら?なんか不安そうな顔してるけど、別に厳しかったりもしないからそんなに身構えなくていいわよ?お母さんには少しだけ涼のこと話してあるし」
「それならいいけど……じゃあ近いうちに挨拶に伺うということで……」
「涼!栞ちゃん!お昼できたからおりておいでー!」
母さんからお呼びがかかった。そういえば起きてから何も食べてなかったからお腹がすいている。
「んじゃいくか」
3人で食卓を囲み昼食を摂った。ちなみに冷やし中華だった。夏の昼食って麺類になりがちなんだよな。
「すいません。お昼ご馳走になってしまって」
「いいのよー、これくらい。なんなら夕飯も食べていかない?おうちの許可がもらえればだけど。」
「いえ……そこまでは……」
母さんが栞にちょいちょいと手招きをして耳元で何かを囁くと、栞はハッと顔をあげて
「ちょっとお母さんに聞いてきます!」
と言ってスマホを掴んで廊下に出ていった。
「母さん、何言ったんだ?」
「んー?一緒にご飯作らない?って聞いただけよー」
意味ありげににやついているので、それだけじゃないんだろうけど、こういう時は聞いても答えてくれないんだよな……。
「許可もらってきました!」
嬉しそうな顔で戻ってきた。
「よかったわね」
「はい!でも今度、涼をうちの食事に連れてこいって言われちゃいました」
「まぁ行くことにはなってたから……」
逃げ場は完全になくなったみたいだ。逃げるつもりはないけど覚悟はしとかないと。
「じゃあこの後栞ちゃんと一緒にお買い物行ってこようかしらね。涼は留守番よろしくね」
「俺だけ除け者かよ」
「女同士のほうが話しやすいこともあるでしょ」
「まぁいいけど……栞は母さんと2人で大丈夫か?」
「大丈夫よ。水希さん、涼の小さい時のこととか知りたいです」
「それならますます涼がいないほうがいいわねぇ」
というわけで食事の片付けを終えた母さんは栞を連れて買い物に行ってしまったので、独り取り残されて暇になった。
お腹もふくれて、ほどよい眠気が襲ってきたので身を任せることにした。帰ってきたら起こしてくれるだろうし、このままリビングのソファで寝てしまおう。
『パシャッ』
「んん……?」
物音で意識が浮上して目蓋を開けると、目の前に栞の顔があった。やっぱり可愛いなぁ……なんて寝惚けた頭で考えていると栞がスマホをこちらに向けて構えているのに気がつく。
「あ!涼起きましたよ!」
「ちょっと待って。栞、今俺のこと撮った?」
「き、気のせいじゃないかしら?」
あ、今の最初の頃っぽい……じゃなくて寝顔の写真撮られたんじゃ?
「じゃあ、スマホの画像データを見せてもらおうか」
「嫌よ。涼、女の子のスマホの中を見ようとするなんてよくないと思うの?ですよね、水希さん?」
買い物袋から冷蔵庫に食材をうつしていた母さんがこちらにやってきて
「そうよ、涼。そういうのよくないわよ」
なんかこの2人すごく仲良くなってない?
「それより、涼。あんた休みだからってだらけすぎじゃない?朝も起きるの遅かったし」
んでなんで説教が始まってるの?寝顔撮られたか確認したかっただけなのに……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます