第6話 再会
ころもちゃん、ぱんくずちゃん、ぽてちくんの3人は、ぱんくずちゃんの提案によりトースター付近を目指していた。
「わっ、危ない。」
3人の真横を勢い良く遮ったのは、大きめのホコリだった。何らかの原因で発生した風に、舞ってきたのだろう。ころもちゃんは思わず、声を上げた。
今までもこういった事は何度かあった。トースターに近づくにつれて、人が歩いたり、窓からの風通しが良くなったりするのだろう、食べかすたちには過酷な道のりである。
「ねぇ!なんか聞こえない!?」
少しずつ、ゆっくりと歩いていると、食べかすギャルのぱんくずちゃんが、何かに気づいたようだ。
「確かに!何かあるのかな?」
ころもちゃんにも、微かにはなし声のような何かが聞こえているようだ。
「僕にも聞こえるよ!近づいてみよう!」
ぽてちくんの言う通り、ころもちゃんたちは声のなる方へと向かった。そこにいたのは、
「拙者は重たい方でござる。拙者にくっついていた方がいいでござる!」
「嫌だよ!なんで俺がお前にくっつかなきゃならないんだよ!盾になれよ!」
「むっ、拙者を盾にするとは!片腹痛いでござるよ。」
何故か言い合いをしている、食べかすだった。
「あんたたち、何してんの?」
さすがに呆れたらしい、ぱんくずちゃんがふたりに声を掛けた。
「むむっ!ぱんくずくんがふたり!?」
白い大きめの食べかすが、ぱんくずちゃんを見るなりそう言う。しかし、3人はそれよりも気になることがあった。
「ぱんくずくんって、あなたは食パンの食べかすなの?」
白い大きめの食べかすの影に、身を潜めていた茶色の食べかすに、ころもちゃんは問いかける。これが本当なら、ぱんくずちゃんは仲間と再会できる事になる。
「そうだけど、ってお前は!」
どうやら食パンの食べかすであったようだが、彼もまた、ぱんくずちゃんを見るなり驚いた。
「お前は!あの時食パンにしがみつきながら喚いていた食べかす!」
仲間どころか、全く同じ食べ物から生まれていたようだ。どうやら、ぱんくずちゃんはずっと騒いでいたようで、ぱんくずくんと呼ばれる彼は、覚えているようだった。
「あんた、あたしと同じ生まれなの?まじで奇遇じゃん!ヤバっ嬉しい〜!!!」
ぱんくずちゃんは、悪口のようなものを言われているのにもかかわらず、再会できた事が嬉しかったようで、はしゃいでいる。
ころもちゃんは、その姿をみて心底嬉しいと感じた。
「とりあえず、少し安全なとこ行かない?そこで改めて自己紹介とかしようよ!」
ころもちゃんたちは、拓けて安全なところを探し、5人でそちらに移動した。
この状況を、ころもちゃんは密かに楽しんでいた。これまでのこと、これからのこと、聞きたいことがたくさんある。まずは再会を喜ぶパーティーがしたいな、そう思いながら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます