第4話 おこめくんと…
この世には、主食になるものはパンの他にもいくつかある。中でも代表格なのはお米だ。特に、日本では古くからお米を食べる習慣がある。
最近では食べる量が減ってきていると言われてきてはいるが、米派かパン派かの論争は未だに解決されていないほどだ。
白くツヤのある見た目と、大体のおかずに合うという味、まさにトップを争うに相応しい、主食だ。
「今日は僕、ご飯の気分だなあー!」
少年は、今日もお米を口に運ぶ。その口に入り切らなかった犠牲を生みながら。
◇◆◇
「えっ?うぇぇええ????」
ぼとり。という音は鳴らないが、割りと大きめの欠片となって落ちたものは、ホクホクに炊かれたご飯、お米だ。
「拙者、結構大きめでござるよ?何故落とすでござるか?」
しかし、少年は気づかない。どうやら、目に見える大きさでありながら、食べかすになってしまったようだ。
「うむ、こうしては埒があかんな。何か…」
お米の食べかすは、何か無いかと周りを見渡す。すると少し遠くに茶色の物体が落ちている事に気づいた。
「おぉぉぉい!!!おい!!!!」
お米の食べかすは精一杯の声で叫ぶ。すると、茶色の物体は気づいたようで、風を利用しふわりと体をうまく浮かせ、こちらに来た。
「お主は食べかすか?拙者はつい先程、食べかすになったばかりである。」
茶色の物体は、お米の食べかすの挨拶に続き、こう話し出した。
「俺は食パンの食べかすだ。数日前にあの坊やに、トースターから落とされたんだ。他の仲間で生き残ってるやつは、出会っていないな。」
どうやら、この食パンの食べかすは、数日前から食べかすとしてうまく生き残ってきたらしい。
「ならばどうだ、拙者と共に行動しては如何か?今なら拙者にくっつくこともできるぞ。」
「丁度、友人とかいなくて、少ない人生を無駄にするとこだったからいいぜ!でも、くっつくのはごめんだけどな。」
「感謝する。折角だ、呼び名でも付けてはみないか?」
「俺はどうせパンの食べかすだからな。ぱんくずくんでいいぜ。お前は米だからなぁ、おこめくんにでもしとくか?」
「おこめくんか!うむ、気に入った。ぱんくずくん、これからよろしく頼むぞ。」
「おう、こちらこそなー!」
こうして、ライバルとして生まれたふたりは共に行動し、手を取り合って絆を深めていく事になった。
食べかすの人生は、ひどく残酷だ。しかし、ふたりは思ってしまった。もう一度、栄光を夢に見てもいいのでは無いかと。
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