#62 昭和の旅 思い出ユース 2

ユースは旅の目的ではないので リピートする事はほとんどないですが

私には一軒だけ 学生時代毎年春と夏に訪ねていたところがありました

瀬戸内海の生口島にある瀬戸田ユースです

   (今あるユースとは 開業年が違うので別物です)

令和の生口島は橋もかかり レモンの島として有名になっていますが


当時はマイナー 船降りたらなんもない! バスは日に数本で船と連携してない! 

仕方なく海沿いの道を歩きました 右に瀬戸内海 左の傾斜畑にはレモン

その時 生まれて初めて 木になっているレモンを見ました

   〝内海と檸檬畑を割りて道〟 その時の風景を句にしたものです


「バス停 3つ4つくらいかな」と地元の人に聞いて歩いたんですが

田舎のバス停の間隔の長い事 長い事(今の旅でもご注意)

島を半周程して なだらかなビーチの手前にユースが見えた時は 

砂漠でオアシスでした


迎えてくれたのはユースを運営してる〝ママ〟と〝だっこちゃん〟 

アラフォーのおばちゃん二人組です

「あれ~ 歩いてきたのかい 暑かったろう」と言って置いてある

大鍋の蓋を取ったら 中にはレモンの輪切りがびっしり浮かんだ

レモネード? それをお玉でコップにすくって 砂糖と氷を入れ 

箸でかき回して勧めてくれました 美味しかったぁ~


夜のミーティングと言っても 人が少ないですからおばちゃんも一緒に

その季節季節で八朔やスイカを食べ 誰もいないビーチで花火する…

私には 親戚の家よりリラックスできる場所でした

ここはユースホステルというより民宿に近くて 邪道なのかもですが


ここに夏行くと 一つだけ大変だったのは お盆過ぎの時期には

ビーチに 多分 瀬戸内のあちこちの川で灯篭流しをして流した

灯篭舟やら野菜果物のお供え はてはお戒名を書いた札 が

潮の流れに乗って浜に打ち上り 泳ぐどころじゃなかったです 

今は多分 海まで流す前に川で回収しているのではないかと思いますが

昭和中期は灯篭流しは 海へ流しっぱなし でしたから


令和には文化財になっている耕三寺は 当時まだ建設途上で

見学はできましたが 出来立てキンキラキンの伽藍は

東照宮や東寺等 有名寺社のレプリカ(その時はそう思った)で

庭には孔雀が歩き回り池には金の鯉が泳ぐ…… きれいだけど… 

だったんですが 昨今の有名寺院の修復後を見れば どこも元々

出来たばかりはあんな感じだったのかな と思い直しています

あれから半世紀を過ぎ 今は程よくなっていると思います


瀬戸田ユースから泳いで行けそうな距離に大三島がありましたが

島と島の間は 見た目よりずっと潮が早くて泳げないんだと言われ

    いや 泳いで渡る気はなかったけど

船で渡りました 橋がかかった今は国宝の島として有名になりましたが 

その頃は観光客もいないような地味な神社で ここに沢山の国宝がある事に

ビックリしました 一個の国宝でも人が集まるのに ここはなぜ 

こんなに知られてないんだろうかとも思いました


その時の島のバスの思い出です 観光客は私と友人3人だけ 

ゆっくり境内や宝物館を見て参道を戻っていくと 

こちらに向かって 駆けてくる人が…

島バスの車掌さんでした めっちゃくちゃ揺れるバスの中で周遊券を

落としていたようで 「あの子たちだ」(しかいない)と

折り返し途中 大山祇神社のバス停で車掌さんがバスを降りて 

我々を探しに来てくれたのです

バスで待ってれば乗りに来るだろう と思わず走ってくれた 

その優しさに感激した 大切な思い出です

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