#57 昭和の旅 カニ族

(エッセイ初期に 旅の話を始めたら止まらなくなり

 これは表題からずれてないか? と思って引き上げましたが

 11カ月書き続けて来て いや 旅抜きでは〝私の昭和〟ではない

 と思いなおし 再掲載します 以前に読んで頂いてた方ごめんなさい)


〝カニ族〟という言葉を知ってますか 昭和に発生した族類の中でも

銀座を闊歩する〝みゆき族〟 原宿で踊る〝竹の子族〟とは

族性が大分違います  ヒッピーやボヘミアンに近いかも


今やヒマラヤでも登らない限り使わないだろう

両サイドに大きなポケットのついた横長カーキ色のリックで

数日着たままの登山シャツやTシャツ姿で切符を握りしめ

日本全国を旅しとりました


1Lのポリタンク(簡易水筒 ペットボトルのご先祖)の入るサイズの

両側ポケットのついたリックって 背中にしょって列車に乗ると

ただでさえ今より狭い通路を前向きでは通れない

そこで横向きにカニ歩きをして通ることから発祥した名前と言われてます

全体に薄汚れてて 着替えてるか? いつ洗った? という見た目で

満席だと どっかり連結や時には通路に座ってしまう

正直かなり迷惑な感じでした ごめんなさい


海外旅行は1964年に自由化されましたが(それまでは観光では行けなかった)

給料が手取り10万切ってる時の 1ドル=360円 ですから 

海外は金持ちの特権〝夢のハワイ〟だった時代

普通の若者には国内をできるだけ節約して回る観光も贅沢でした

夏休みには 皆々学割を使って旅をします

もちろん スマホもパソコンもない 必需品は時刻表


金と時刻表があればなんとかなる で男子は旅に出られますが

女子は先に時刻表で大体のルートを決めて 行く先々の 

ユースホステルを予約しておかないと 旅館は中々泊めてくれなかった

     女の一人客は 家出か犯罪か自殺と疑われた時代です


ユースもないところに泊りたいときは その地域の役所の観光課に

往復はがきで 希望日や予算を書いて問い合わせると 

どこも 実に親切なご紹介のお返事を下さいました

なにせ予算が安いので大抵は 地元の自宅をそのまま使った民宿です 

一番風呂に入れてもらって 家族と一緒に夕食食べてテレビ見て

部屋に戻るパターンです それはそれ 地元の訛りとじかに話すのも

出発の時には そこの子供が手を振って見送ってくれるのも

旅ならではの楽しさでした


男子は 行きついた先で近隣のユースや宿を探し ない時は

「ステーションホテルかパークホテルかリバーサイドホテル」泊

初めて聞いた時は私も面くらいました 分かりますか?


すべて 今や使用不可能な昭和の宿? です

駅の待合室で寝る 公園のベンチで寝る 河原で寝る 

つまりは野宿です

東北を回って 秋田で大阪までの乗車券を買ったら

甘食(ニ個で10円だったパン 口中の水分もっていく系)

しか買えなくて 普通列車を乗り継ぎながら 駅の水道の水飲んで

ようよう戻った なんて旅を自慢した先輩もいました


ちなみに私は 大阪から東京の実家に戻るのに大阪~紀伊半島~東京ルートで

一枚切符を作り 何泊かしながら 総て各停で移動した事があります


一枚切符とは 国鉄路線を一方向に一筆書きルートをつくれば買えます

距離が伸びれば 学割効果が大きくなるのが魅力

距離に基づき決められる有効日数内なら何度でも途中下車・乗車できます

そのたびに改札では 硬券に小さな駅スタンプが押されるので 

最終駅で可愛くwお願いして その切符を記念に持ち帰らせてもらいました


今は…  まず硬券がないですよね 一枚切符って まだあるんかな?

  

夏でも 列車もユースも冷房のあることなんてまずなくて 吹く風だけが頼り 

今振り返ると よくあれで 倒れず旅してたなあと思います

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