第18話 避難訓練 昭和は火災令和は暴漢

小学生と話していたら〝避難訓練〟ばっかりだという

「火災避難訓練ならやったことあるよ」と話した


校内放送(当然テレビなんかない)で

「給食調理室から出火しました 非難して下さい」と流れる

もちろんその時間に放送がある事は承知だから

授業なんかずっと上の空だもの すぐ廊下に二列に整列

「椅子をちゃんとしまいなさい」なんて言ってて先生もノンビリ

なぜか 右手で左手のひじを掴めと指示されて校庭へ

とうてい火事とは思えないスローテンポで集合し 即解散

   後に「戦後すぐ建った校舎はやたら長い廊下で 火が出たら

   廊下が煙突になって火が走るから 整列してる間に…」と

   言われました まっそれも真偽のほどはワカリマセンが

令和では 火災避難・地震避難・災害父兄受渡 の訓練の他に

〝暴漢避難訓練〟もするという 生徒は扉に鍵をかけ机や椅子で

バリケードを築く練習らしい もちろんシュミレーションは大切だけど  

つくづくせちがらい 可愛そうな気がする


バリケードと聞いて クラス一丸となってバリケードを築いた

昭和の中学時代を思い出した


コントにあるような 扉の上部に黒板拭きやバケツを挟んで

教師に落とす というのは 我々の時代ではすでに時代遅れ(笑)

それでは特定の犯人が糾弾されるからね

それでもイタヅラは面白い 

・教室後方でその教師の嫌うシャープペンシルのカチカチ音を

 ならす「だれだ!」と教師が後ろに向かうその列が少しだけ狭まっていて

 机のへりにはべったりチョークを塗ってある…

 後ろまで行って犯人が見つからず 背広の横にべったり付いたチョークに

 気付く頃には 素早く回された雑巾で証拠は消えている

   まあ 教師にも手際の良さとクラスの連帯を愛でて?

   それ以上 事を大きくはしない器量はあったな

   ちなみに 令和の小学生に話したらドン引きされた


しかしながら バリケードはちょっとした騒ぎになった

発端は いつも高飛車の女性教師が誤解からクラスの男子を

黒板拭き(それも木の方)で叩いた という事

こういう事は 日頃からの不満がなければ着火しない

戦後人口爆発の折から 我がクラスは屋上に二クラスだけの

急ごしらえのプレハブ教室で いい意味孤立していた

そこで 件の教師が授業にやって来る時に前後の扉を

バリケード封鎖したのだ


しばらくガタガタやっていた教師は階下に降りて行った

別の教師を呼びに行ってる間に 全てを元に戻して

クラス全員何食わぬ顔で… という予定だったのだが

奴は ヒステリックに泣き叫びながら廊下を走り

担任に詰め寄ったので 予想以上の教師が団体で押し寄せた

頭には 安保闘争のバリケードがあったのかも知れないが

教室は何事もなかったかのように 彼らを迎えた

もう既に 後列の若い男性教師は笑いをこらえていたが

担任は「扉をガタガタしてて、開きにくかったみたい」という

言い訳を一応受け取って 自分が謝罪して事を収めた

というか 収まったんだよね あの頃は


今思うと 当然クラスには実行班と傍観班(私も)がいた訳だが

クラスとしての足並みは 一体化してて乱れなかった

耳に入った父兄も「なんて事すんだい!」程度の叱責だったという


今なら… どの位の大事になったんだろうか

というか 受験に日常の態度・行動点が加味されている今の学生は

イタヅラしようなんて 思っても見ないのだろうな

それが 湯が沸く前のプクプク泡みたいな状況を産んでるようにも

思うのだけど

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