第15話 冷房はステータス

令和の昨今〝高齢者はエアコンつけて下さい 熱中症で死にますよ〟

なんて 呼びかけられてますが

ついこの前まで〝クーラーは体に悪いから年寄りは付けない方が

いいですよ 身体を甘やかすと汗を出す機能が衰えて弱ってしぬよ〟

なんて 真面目に言われてたのに エライ違いよう

(扇風機もあまりかけると皮膚呼吸が止まって死ぬよ なんて言われたし)


これはするな いやこれはしなくては という全く相反する意見が

すっごいエラそうな先生のSNSで飛び交うのは今も一緒ですから

最後は「信じるか信じないかはあなた次第」という事なんですかね


さて クーラー(冷房専用機です)の始まりは知りませんが

記憶にあるのはまずデパート と言っても店内は今ほど冷えませんから

天井には扇風機が取り付けられて回っていました

そして出入り口の上部には 冷房の吹き出し口があって 

そこからかなり冷たい風を吹き出して 客寄せしていました 

吹き出し口の桟には水色のリボンがついていて ヒラヒラと動き

〝今 ここ涼しいよ〟と誘います 

沢山の大人たちが そこに立って一瞬の涼をもらっていました

サービスと人寄せ だったんでしょうね

涼といえば 花氷という石油缶位の氷柱のなかに花を封じ込めたものを

店内に 何本か立てていました これも見て触って一時の涼を得るんです


電車に冷房が入ったのはずいぶん後の話で 

それまでは天井の扇風機だけが命綱でしたね  

一周回って 弱冷房車が誕生する時代になるなんて…

タクシーの冷房もほぼなくて 走っている時は窓を開ければいい風が入って

渋滞にハマったら 蒸し焼きが普通で 冷房車普及途上では料金は同じなので

冷房車に当たったら ラッキーでした

でもせっかくの冷房車なのに 運転手さんが「冷房はキライだ」とか

「煙草吸うのに窓開けられないから」って冷房してない車もあったりして

がっかりした事も…

自家用車も 窓閉めているのはクーラーが入ってる車だから 

クーラーをオプションできない人は 見栄張って暑いのに窓閉めたままで

走ってるなんて 笑い話もありましたね


『冷房中』の張り紙は 町の喫茶店でよく見かけました

冷房があれば 他店と差をつけられた時代です

その頃の冷房は さっぶいのさぶくないのって

暑くてたまらなくて 飛び込んできた人に合わせているから

頼んだアイスコーヒーが届く頃には ホットが飲みたくなる位

寒い まあこれ 客の回転率にも貢献してたかも


喫茶店(食堂とかも)の扉の張り紙といえば もう一つ

『テレビ放映中』『高校野球 〇〇高校2-1△△学園』

『プロ野球放映中 巨人ー阪神』

みたいなのも多かったです 外勤のサラリーマンとか

一人暮らしの家にはテレビもクーラーもない青年とかが

涼みながら 生放送の中継を見られる場所でした

(今 喫茶店でテレビつけてたら苦情がきそうですね)


家にクーラーが付いたのは中学位だったかな

今 思えば いいお値段したのに

年に数ヶ月しか使わない家電だったんですよね

今は エアコン(冷暖房機)になって使わないのが数ヶ月ですね


その前は もちろん扇風機 大事なお客様が来る時は

氷柱を用意して 扇風機の前に立てて冷たい風を送ってました

客用座布団の横には 広告なんかついていない京うちわをそっと置き

氷柱をカッカと欠いて 冷たい飲み物に入れたりしてましたね


それでしのげたのは 温暖化が進んでなかったからでしょうか

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