第十八話 ルミナス騎士団4
「ルミナス騎士団の方々――、グランドウルフの退治、並びに、治療に感謝いたします」
商会長ローレンスがヴァイオレットに深々と頭を下げて言った。
ローレンスは右脚を負傷しているようで、傍の人の肩を借りてこちらに歩み寄る。その後ろをテラと同い歳くらいのルイが影のようについてくる。ルイは明らかに自分のではない重そうな剣を両手で抱えている。おそらくローレンスの剣なのだろう。
「こんな姿で申し訳ないが、許して欲しい」
ヴァイオレットは切り株に腰を下ろしたまま応える。改めて立ち上がろうとするが、背後に控える体躯の大きな騎士が頭を左右に振ってヴァイオレットの肩を押さえる。ヴァイオレットは仕方なくといったように腰を下ろした。
ヴァイオレットは重そうな鎧を解いて、簡易な白のチュニック姿になっていた。しかし、剣は腰に佩いたままだ。剣の柄には星と剣をかたどった金のレリーフが見える。傍にはひしゃげた白銀の鎧が転がっている。グランドウルフとの闘いであちこちに陥没が生じ、肩当ての部分は変形しすぎて原形がない。その鎧はグランドウルフとの死闘の激しさを物語っている──。
ヴァイオレットの右側に控える騎士が光輝く掌をヴァイオレットの腕に翳している。その光を帯びて腕の傷が徐々に小さくなっているように見える。
背後に控える騎士は一際体躯が大きく、おそらくジェイスと同じくらいの上背があるのではないだろうか。その騎士のせいで、ヴァイオレットの身体の細さが際立つ。
こんな可憐な女性があのグランドウルフを倒してしまうなんて……。──私もあんなふうにみんなを守れる強い人になりたい……。
アヴァンとエルサと繋いでいる手に少し力がこもった。
「ルミナス騎士団の従騎士ヴァイオレットです。この小隊の隊長を務めております」
そう言ってローレンスへ手を差し出した。
「まさか、ルミナス騎士団の方々がこんな辺境の地にいるとは──。なぜこんなところに……?」
ローレンスは差し出された手を丁寧に握り返しながら問うた。
ヴァイオレットは暫し沈黙して、逡巡を顔に浮かべる。
「隊長……!!」
巨躯の騎士がヴァイオレットに注意を促すように鋭い声を発した。
ヴァイオレットは右手を挙げ、続けて何かを言おうとするのを黙らせた。
ザナック、お前の懸念も分かるが、ここは情報収集の方が大切だ……、とヴァイオレットは言いローレンスの方に向き直る。
「──実は、我々はとある任務により、ここより北方のカトラ村に行くところなのですが、カトラ村に関して何か聞いていませんか?」
ヴァイオレットは言った。
「カトラ村……」
ローレンスはそう呟くと、驚きの表情を浮かべる。
「そういえば!」と言い、イルス祭参加予定だったカトラ村の代表者がやってこなかったことを伝えた。
それを聞いてヴァイオレットは驚きの表情を浮かべていた、後ろのザナックも同じだ。
「どうやら急いだ方がいいらしいな……」
ヴァイオレットはそう呟く。
ううっ……っとジェイスが突然呻き声を上げ、会話は途切れた。
「ジェイスさん、大丈夫ですか?」
傍に控えていたロトがジェイスの顔を覗き込みながら言った。
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