Episode9 楽しい花見会



5日も眠っていたリコリスは、身体の鈍りを解消するために訓練所へと来ては身体を動かすためにパルクールをこなしていた。



「よしっ、感覚が戻った!」


「おー、やってんなー!リコリス!」


「あ、レーヴェ」



リコリスが着地を決めると同時に、丁度レーヴェが訓練所へと腕を動かしながら入ってくるとリコリスを見つけては声をかけてきた。



「5日も寝ていたんだろ?急に、こんなに動いても大丈夫か?」


「まぁー、ヨシュアさんには怒られるだろうけどね~……でも、身体が鈍ったら何かあった時に動けなかったら嫌だし」


「まぁー、そりゃあなぁ」


「ちょっと、組み手の相手をしてくれる?」


「お、いいのか!?」



リコリスの提案にレーヴェは目を輝かせていて、“待っていました!”とでも言うかのように急にテンションが爆上がりしている。



「1回だけ、ね?それ以上は、流石に体力的に無理だと思うから」


「おう!いいぜっ!」



レーヴェは訓練所の入り口の側にある武具立てに近寄り、其処からゴム製のタガーを2つ取り出しては片方をリコリスへと投げ渡す。



「んじゃ、寸止めで」


「おう」



リコリスとレーヴェは開始と同時に動いては、互いの動きがわかっているかのように互い譲らない攻め方をしていた。


端から見れば、二人の動きについていけないぐらいの速さである。



リコリスの首にレーヴェのゴム製のタガーが宛てがわれると、リコリスはゴム製のタガーを手放しては両手を上げている。



「こ、降参……」


「イヒヒッ、やっぱり5日も寝ていたからだろ?動きが少し、遅くなっていたぜ?」


「むぅ……、ってか、そもそもレーヴェには勝てないって!」


「イヒヒッ」


「おい、病人!」


「あ、ヴィクトルさん………いたっ!?」



どうやらリコリスとレーヴェの組手を見かけたヴィクトルは、訓練所へと入ってきてはリコリスとレーヴェの側へと来て二人の頭を軽く叩いている。



「いてっ………」


「まったく、リコリスは病人なんだぞ?ちゃんと、医務室で休むとかしておけ」


「いやー、だって」


「だって、じゃない………たくっ、何かあったかと思うだろ?」


「ごめん、ごめん」


「レーヴェも、だ!リコリスに組手を誘われても、其処は我慢して断われ!」


「えー………」



その後、大体3時間ほどヴィクトルから説教を受けたと思えばヨシュアからも説教を2時間ほど受けたリコリスは食堂のテーブルに突っ伏していた。



「もー、……説教、長いっ」


「まぁ、しゃーないって!リコリスが勝手に、やったわけだしな!」


「ライカさぁん……」


「動きたい気持ちは、わかるけどな!」



テーブルに突っ伏しているリコリスの頭をライカは、優しく撫でてから隣の席に座ってはテーブルに右腕の肘をつけては右手の上に頭を乗せて軽く笑みを浮かべる。



「ほら、美味しいもん食べて元気だせって!なっ?」


「はーい」



その日を境に少しずつだがリコリスは身体を動かすために、軽めの仕事をしたり訓練所でパルクールわしたりライカやレーヴェ等と組手をしながらリハビリをしていた。


時が経つというのは、早く感じてしまうものである。



「よしっ、皆で庭園にて“花見”をするゾ!」


「はぁ、まぁ娯楽も必要だしな」


「だろウ!?だから、シェフに頼んでおいたのだゾ!美味しい食事に、美味しい酒を、ダ!」



グンナルが庭園へと皆を誘導すれば、あの桜のような樹は綺麗に満開で咲いては軽く花吹雪のようになっていた。



「本日は、無礼講だから楽しメ!」



庭園の中央の其処には大きめのテーブルが幾つか置かれていて、そのテーブルには豪華な食事やデザートなどが沢山並んでいた。


各自で楽しんでいる中で、グンナルはリコリスの隣に来てはワインを飲んでいる。



「リコリス」


「んー?どうしたの?」


「明日、急遽なのだがナ?興国との国境にある“白い研究所”へと、リコリスに偵察を頼みたいのダ」


「おー、いいけど?」


「どうも、“噂”では怪しい事をしているというのでナ……調べて欲しい」


「りょーかい」



リコリスはクリームを乗せたプリンを食べながらも、隣で話をしながらワインを飲んだりしているグンナルの方をチラッと見る。



「だが、もしも何かあったら………直ぐに、其処から離脱するのだゾ」


「ん?そりゃあ、危険を感じたりしたら離脱するよ」


「うむ、なら良いのだがナ」


「心配性なんだから、グンナルは」


「む…………」



プリンを掬ったスプーンをグンナルの口に突っ込んでから、リコリスは悪戯っ子のように笑ってみせる。



「程よい、甘さだナ」


「ふふっ、甘党なグンナルには足りないってかぁ?」


「そうだナ」


「もー、糖尿病になるよ?」


「大丈夫だゾ、ちゃんと調整はしているからナ!」



リコリスは目を細めてはグンナルを見てから、ふと周りを見渡しては皆が楽しそうに騒いでいる光景を見つめていた。



(最後に、こんな楽しい事に参加出来るなんてなぁ……)


「なぁ、リコリス」


「ん?」


「次は、夏に花火を見ようではないカ」


「ふふっ、花火かぁー……いいね!皆で見る花火は、最高だからね!」








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