Episode7 シャルルの誕生日③
リコリスは目を覚ませば“シャルルの誕生日パーティ”の前日となっていて、また“死亡日”と共に“死因”が書き換えられていた。
(乗り越えた?)
(それにしても、なんで私まで助けようとしているのか……まったくと言ってもいいぐらいに、何の心当たりもない)
“死亡日”は4月5日となっており、“死因”は“任務先の研究所から出る際に謎の薬を撒かれて吐血をしながらも、近くの泉にて投身し溺死する”に変わっていた。
この日は、皆で花見をした次の日だ。
これはまた、残酷な別れを示してくる。
(なんか、気のせいかな?段々と、死に方が……)
(それに、今回は“誰か”とは示していない?)
リコリスがベッドから起き上がると同時に勢いよく部屋の扉が開くと入ってきたのは、金色の髪色に頭には狼の耳がありハネっ毛があるショートで、切れ長なキツめツリ目をした空色の瞳をしていて、赤色の半袖を着て黒色の軍服を前を開けた状態で着て狼の尻尾が生えている背の高い青年である。
「び、びっくりしたぁ……!ちょっと、ラグナスさん!?」
「あ、慌てて帰ってきた所なんやで!」
「慌てて??」
「何処も、“まだ”怪我とかしてへんな!?だ、大丈夫なんだな!?」
「ちょっ、ちょっと落ち着いて……」
「そうダワ、落ち着くアル!部隊長」
ラグナスの頭を何処から出したのか分からないが、大きなハリセンで勢いよく叩くというより払うように叩いてリコリスの目の前から退場させていた。
その人物は若葉色の髪色にセミロングで少しハネっ毛もあり頭には大きめなアホ毛もあって、パッチリ目をした琥珀色の瞳で黒色の縁の眼鏡を身に着けており、少しブカブカな白色の軍服を着ている背の低い少女だ。
「ま、マルル……お前っ」
「報告で聞いてたデショ?」
「いや、それでも実物を見るまではっ落ち着けへんわ!」
「あー、はいはい」
「でも、本当に大丈夫みたいだな?良かったで!ほんまにっ!」
ラグナスは元気そうなリコリスを見ては明らかに安心して、その近くにあった椅子に座ってはリコリスを見ては優しく笑みを浮かべていた。
「もう、安心せや!ロゼッタの嬢ちゃんの家は、元々は色々とやらかしていたから辺境の地へと飛ばされたわ」
「ロゼッタ様が??」
どうやら物事が起きる前に行動をした結果、伯爵家は軍事国家の辺境の地への異動をさせたようだ。
だから、誕生日パーティでの“死因”が起きなくなり日付も違くなったという事だ。
「でも、この時期に異動なんて」
「まぁ、大変なのは確かアル!でも、色々と興国へと何かしらの情報を流していたのは確かな証拠がアル!」
「あー、そうなんだね……」
「さて、明日はシャルル先生の誕生日やろ?盛大に祝ってやらんとな!」
少しずつだが何かしらの結果が変わりリコリスの“死因”さえも覆されているのは確かでもあるのだが、リコリスは少しだけ引っ掛かっている事が二つある。
まずは、1つ目としては“死亡日”だ。
今まで亡くなる寸前当たりで始めるというのに、この“世界線”では“死亡日”まで設定されて少しの平穏な期間というよりも、この“世界線”に留まらせようとしているかのように設定されている事だ。
2つ目としては“時戻し”を使用範囲だ。
集会では“幹部全員”の同意で特定の日まで、“時戻し”を行えるという能力だ。
だが、毎回“時戻し”が行われると何故かリコリスを含めている事だ。
(それとも、其処まで戻さないと救えないとか?)
「おい、リコリス?」
「え、はい?」
「何度も呼んだのに反応がないから、心配したんやぞ?」
「あ、ごめんごめん……まだ、シャルルさんのプレゼントを悩んでいて」
「なら、エエけど……」
とりあえずは明日の“シャルルの誕生日パーティ”は普通に過ごせるならば、ちゃんとシャルルへのプレゼントも考えないといけない。
(誕生日プレゼント、何がいいのか分からないなぁー)
(ライターとか?あの人、煙草を吸ってるし……)
(もしくは、身体に毒じゃない煙草をプレゼント??)
リコリスはラグナス達と別れてはシャルルの部屋へと向かおうとすると、丁度部屋に戻ってきていたシャルルと会う。
「あ、シャルルさん」
「っ!?……リコちゃん」
「どうかしたんですか、そんな青褪めた表情をして!どこか、怪我でもしたんですか?それとも、気分が悪いとかっ」
「っ……」
シャルルは居た堪れない気持ちを抱きながらも、リコリスに近寄りリコリスの腕を掴み引き寄せては少し強めに優しく抱きしめている。
「しゃ、シャルルさんっ?」
「……ごめん、ごめんっ」
「あ、あの………シャルルさん?」
「っ………本当に、ごめんね……」
「もー、何に謝っているんですか?はっ!まさか、また何か壊したりとかしたんですか!?」
「………………ふっ、………そんな事はしてないって……相変わらずだなぁ~、リコちゃん」
リコリスの見当違いの答えにシャルルは笑いを堪えていたが、あんまりにも“いつも通り”で笑いを堪えてる事を止めて涙を浮かべながらも笑っていた。
next
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます