Episode6 シャルルの誕生日②




「なぁ、リコちゃん」


「んー?」


「パーティなんだけどね」


「ちゃんと、行くよ?シャルルさんの大事な誕生日だし」


「あ、うん」



リコリスは満面な笑顔で答えながらも、内心的には何とも言えない気持ちがあった。


また、シャルルの目の前で死ぬのを見させないといけないという事。



(だけど、これも“役目”でもあるし“運命”なんだと思って諦めるしかない)


(今までも、そうしてきたじゃないの……)


(どんなに、大切な“相手”でも………離れたくないと、思っても……)



リコリスはシャルルとライカと話をしてから、その場を歩いて立ち去りながらも色々と思い出していた。



(本当は、凄く離れたくない人だって私には居た……)


(一度だけ、抗おうとしたけど………すぐに別の“死因”が私に牙を向けてきた)



リコリスは窓枠に寄り掛かり、夕日の空を見上げては瞳を閉じていた。



(“死”を繰り返さないといけない)


(それが、“死役(しにやく)”の役目なんだから……)



その後は三日間のあいだは何事もなく進んで、“シャルルの誕生日パーティ”の当日となり再び青いドレスを着ては会場へとリコリスは来ていた。



「お!綺麗じゃん」


「レーヴェ?あれ、監視は?」


「んー、部下に託して総統の近辺警備をしに来たんだよ」


「あー、なるほど?」


「んじゃ、俺は行くけど………ちゃんと、大人しくしておけよ?」


「もー、子供扱いしないでよね!」



レーヴェは笑いながらもリコリスの頭を優しく撫でると、その場からレーヴェが音もなく消え去ると同時に時計の音が止まったことにリコリスは気付いては、近くでロゼッタとシャルルが言い争いをしているのが聞こえてくる。



「ですからっ、私はシャルル様の事を想ってリコリスから離れるように言っているんです!」


「だからって、無理矢理と離すために薬物を使うのは軍事国家では死刑だ」


「っ………なんで、……」


「……調べれば、キミは色々と裏でやらかしてくれているって知り合いの冒険者から聞いた」


「!?」



ロゼッタはシャルルの冷めた眼差しを見ては、泣きそうな顔をしては俯いて近くにあった果物ナイフを掴んでいた。



「貴方を奪われるぐらいなら、」


『ーーーーを奪われるぐらいなら』


「私が、貴方を殺しますっ!」


『ーーーーが、ーーーーを殺しますから』



リコリスは何かと重ねたが何なのか分からないが、無意識に身体を動かしてはシャルルの前に来てはロゼッタが持ってる果物ナイフによって深く刺されてしまう。



「ぁ………」


「だめ、だよ……喧嘩、なんて……」


「リコリスっ!?そんな、“また”かよっ」



シャルルは泣きそうな顔をしながらも、倒れそうになったリコリスを優しく抱きしめては座り込む。


慌ただしく周りが動いては、誰かは軍医を呼び出していたり止血しようと動いている人もいた。



「り、リコリスっ」



リコリスとシャルルの側へと駆け寄ってきたのは、ライカとレーヴェの二人で止血をするのを手伝ったりしていた。


だが、リコリスは手を伸ばしてはシャルルの頬を優しく撫でたと思えば力なく床へと手を下ろしてしまうと、リコリスの意識はブラックアウトしてしまう。



一瞬だけ重なった“アレ”は、何だったのか。

考えようとしても、白い靄が覆い隠してしまい考えることなどが出来なかった。



リコリスの意識が浮遊すると其処は自室ではなくパーティ会場の中で、“死因”が“シャルルの銃で撃たれそうたったロゼッタを庇って撃たれて死ぬ”に変わっていた。



「どうした、リコリス?」


「あ、レーヴェ」


「なんか、ボーッとしていたけど大丈夫か?体調が悪いなら、部屋で休んでおけ」


「あー、うん……そうさせてもらうね」



リコリスの顔色を見てはレーヴェが心配そうにしていて、部屋へと休むように言われてリコリスは休憩室用に用意された部屋に向かう。



「あら、ビッチじゃないの」


「ロゼッタ様」


「丁度、貴女に話があったのよ……休憩室に行くのでしょ?なら、其処で話をしましょ」


「え?あ、はい」



リコリスと共にロゼッタは休憩室へと入っては、リコリスを突き飛ばすとリコリスは床に倒れてしまう。



「いたっ……!」


「なんで、なんで、貴女なのよっ……私は、ずっとシャルル様の支えをしてきたってのにっ!パッと出の貴女がっ……」


「ロゼッタ様」


「貴女が居るからっ、いけないんだわっ!!」



ロゼッタは隠し持っていた折り畳み式のナイフを取り出しては、そのナイフをリコリスへと振りかざそうとした時に扉が開いてシャルルが銃を構えては、ナイフを振りかざしていたロゼッタへと向けるがリコリスが慌てて立ち上がりロゼッタの前に来ていた。



「リコ、ちゃん……?」



一つの銃声と共にリコリスは床に倒れていくのをシャルルは唖然とした表情で見つめては、その場で床へと力なく座り込んではしまう。



「リコリス!?」


「今の銃声はっ、何があったっ!!?」


「シャルル先生っ、早まったんじゃっ…!?」



ライカとヴィクトル、それにレーヴェが部屋に入ってきた所で、リコリスの意識はブラックアウトしていた。



「僕が、………リコリスを……」






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