Episode5 シャルルの誕生日①




本日は、“シャルルの誕生日”を祝うパーティが行われる日だ。



それなりの規模でもあるパーティだからなのか、同盟国や周辺国からの来賓の方々も招かれている。


だからこそ、危険も多い。

この中には、総統の命を狙う“暗殺者”も混ざっている可能性が高いからだ。



(まぁ、だからこそ“暗殺部隊”が総出で監視していたり“異端査問官”も待機していたりするんだけど……)



リコリスは鏡に映っている自分の姿を確認してみれば、そこには少し暗めの青いグラデーションのドレスを着ている自分が映っていた。



(まさか、こんな姿で死ぬ事になるなんて普通なら思わないよね……ははっ)


「ちゃんと、ドレスで来てくれたんだねー!リコちゃん!」


「シャルルさん」


「ふふっ、嬉しいなぁー……しかも、青色だなんて」


「まぁ、本日のシャルルさんのパートナーですからね!ちゃんと、シャルルさんのイメージに合う色を選びました!」



シャルルとリコリスが話をしていると、音楽が響いてきては社交ダンスが始まっていた。



「では、一曲お付き合いを頼めます?」


「ふふっ、僕の可愛いお姫様の頼みは断れないなぁ」



シャルルはリコリスを引き寄せては、響いてくる曲に合わせて会場の中心で踊っていた。


リコリスは、嬉しそうな表情をしているシャルルを見ては少しだけ複雑な気持ちがしていた。



(懐中時計の音が、そろそろ止まる……そうしたら、開始だ)


(ごめんね、シャルルさん……)



曲が止まってシャルルとのダンスが終わると、リコリスは係の人からオレンジジュースが入ったグラスを受け取る。


それと、同時に懐中時計の音が止まってしまっていた。



「もー、喉乾いた」


「ふふっ、緊張してた?」


「そりゃあ、初めて踊ったわけだし?」



リコリスはグラスに口を付けては、グラスの中に入っているオレンジジュースを飲み干して直ぐに喉が焼けるような締められるような感覚がしてグラスを落として割ってしまう。



「リコちゃんっ?」


「っ……」


(だから、毒殺って、嫌いなんだよね……苦しさが、長引いて、……何よりも、辛そうにしている表情を長く見ないと、いけない……)



その場でリコリスが倒れそうになるとシャルルが支えては、その場で座り込んでシャルルは耳に身につけているインカムで何焦った声で誰かと話をしている。



「リコちゃんっ、今、軍医が来るからっ」


「しゃ、る、さん……」


「だ、大丈夫だからっ」



リコリスは霞む視界を頼りに手を伸ばしては、シャルルの頬に触れて小さな声で“ごめん、ね”と呟くと同時に、その触れていた手から力が抜けてシャルルの頬から離れるとリコリスの意識はブラックアウトする。


微かに、泣く声と騒ぎ声を残してリコリスはシャルルの目の前で亡くなった。



少し浮遊したような感覚と共に、リコリスは目を覚まして見れば自分の自室のベッドの上に寝転がっていた。



また、だ。


“時間戻し”によって、あの出来事が起きる三日前まで戻されている。



(苦戦、している?)


(誰が、そんな状態になっているんだろう?)


「ってか、また“死因”が変わってる……死亡日は同じ、ってところ??」



幹部の誰かを救うために、何度も“時間戻し”を行っているのは確かなのだろう。



(んで“死因”は、“シャルルがロゼッタと言い争いをしている時に、ロゼッタがナイフを取り出してはシャルルを狙うがリコリスが庇って刺される”………刺殺ってわけかー)


(ってか、ロゼッタって……伯爵令嬢のロゼッタだよね?)



扉を叩く音がしてはライカが入ってきては、リコリスの顔を見ては明らかに何かに安心したかのような表情をしていた。



「………よかったっ」


「え?あ、ライカさんっ?ど、どうしたんですか!?な、泣いて……」



リコリスは突如として泣き始めたライカを見ては、慌ててライカに近寄ればライカはリコリスの手を掴み引き寄せては優しく強く抱きしめていた。



「……あ、あのっ?」


「ごめん、少しだけ………本当に、少しだけ………このままで」


「あ、はい」



リコリスはライカが落ち着くまで、そのまま抱きしめられたままで居ながらもライカの頭を触れては優しく撫でる。



「っー、ありがとな!もう、大丈夫っ」


「もう、大丈夫なんですか?少し、顔色が悪いような……」


「だ、大丈夫!ちょっと、ナイーブな変な夢を見ていただけだから、さ!」


「そうですか?」



リコリスとライカが話をしていると慌てて走ってきたシャルルをライカは冷めた表情で見てから、軽く呆れたような表情をしてはリコリスとシャルルの前に立つ。



「おいおい、シャルル先生よー?なーに、走ってきてんだよ」


「………ごめんね~?でも、ちょっと確かめたくて急いで此処に来てみただけだから、さ?勘弁してー?」


「あとで、ヴィクトルに言いつけておいてやるよ」


「えぇっ!?ま、待って!それだけはっ!」



リコリスはシャルルとライカのやり取りをみては、可笑しそうに微かに笑っていた。



「相変わらず、二人はコントみたいに戯れるよね」


「え?嬉しくないんだけど」


「辛辣っ、ライちゃん」


「きっしょっ」






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