Episode4 乙女の野心




あれから、普段と変わらない何事もない日々を過ごしていた。


最初の頃は、周りは何かに警戒をするかのようにレーヴェやシャルルなどが必ず側に居た。




あと一週間で、あの“死亡日”となる。



(一週間後に、例の“死因”で死ぬわけだけど……1ヶ月ってのは、本当にあっという間に過ぎていくってのが実感してくるわー…)


(今のところ、幹部の誰かに何かが起きるって感じはないけど………何か、変わったんだろうね)


(なら、今回ので終わるね……この世界線も)



自分が亡くなった後の世界が見れないのは、当たり前の事だが少しだけ悔しいって気持ちだってある。


“リコリス”が死ぬ事で、その世界の物語が急速に進んで結末へと迎える。

だが、“リコリス”という存在は其処には存在しなくなるから本人は分からない。



(こんな気持ちを感じたのは、いつ振りなのかな?)



あれは、一人の勇者が“リコリス”を助けようとしてくれていた“世界線”の事だ。


黒色の龍が街へと襲撃してくる前の話だが、勇者一行か街へと来て一時の安らぎとして過ごしていて“リコリス”が飲食店のバイト店員をしていた時だ。



“リコリス”の目の前には、オレンジ色の髪色にセミロングで深緑色のヘアバンドを身に着けていて、キツめのツリ目をした金色の瞳をしており、灰色の長袖を着て腰にはオレンジ色の上着を巻いている青年が嬉しそうな表情をしていた。



『また来てくれたんですね、ライアールさん』


『お、おう!リコリスが寂しそうにしてないか、ちゃんと仕事をしてるか気になってな!』


『ふふっ』


『そ、それに……なんか、ほっとけないんだって!』


『え?』



ライアールが何かを言おうとした所で、ご都合的な展開なのか黒色の龍が上空から突如現れては街へと黒紫色の焔を放って爆発が起きた。


そうだ、この時の“死因”は“ライアールの目の前にて、落ちてきた焔を纏った瓦礫に巻き込まれて圧死する”だ。


この出来事によって、巫山戯ていてヤル気が無かったライアールは心改めて魔王を倒すために仲間と共に旅立つ。



(決められた“運命”を歩くのが嫌だと、ライアールさんは言っていた)


(あの出来事の後が、どうなったのかなんて私にはわからないけど……)


「ライアールさん、“あの人”に似ているんだよね……」



リコリスは背伸びをしてから自室を出て廊下を歩いていると向いの通路から、オレンジ色の髪色に頭には狼の耳がありセミロングで深緑色のヘアバンドを身に着けていて、キツめのツリ目をした金色の瞳をしており、灰色の長袖を着て腰には黒色の軍服の上着を巻いて狼の尻尾が生えている青年が歩いてくる。



「お!リコリスじゃん!」


「ライカさん」



何処となく“ライアール”に似たような、そんな雰囲気のある“ライカ”を見ていると少なからず罪悪感を感じていた。


あの最後言いかけた言葉が何だったのかなんて、今では知るすべはない。



「一週間後だよなー、先生の誕生日!」


「そうだねー、ライカさんは何かをシャルルさんにあげるの?」


「おう!アイツって、常に煙草とか吸ってるだろ?だから、身体に悪いとおもってさー!それ用の薬剤を仕入れたから、それをプレゼントするつもり!」


「確かに、それは名案だね!」



リコリスとライカが話をしているとリコリスの後ろの方から、金色の髪色で縦ロールのある背中ぐらいの長さでツリ目をした青色の瞳をしていて、赤とピンク色のフワっとしたドレスを着ている少女が歩いてくるとリコリスを軽く睨んでいた。



「あら、ビッチのリコリスさんじゃないの?こんな所で、幹部に媚を売っているなんて……だらしないですわね?」


「ロゼッタ、別にリコリスは媚なんて売ってないからな」


「ライカ様は、知らないのですのね?嘆かわしい事に、シャルル様と出来ているって話が?あるんですのよ?」


「はぁ?んなわけ」


「それ、ただの噂ですよ?別に、私には恋人とかも居ませんし(この世界線では、まだ居ない状態なだけだし)」


「嘘をつくんじゃないわよ!」


「はいはい、これからオレらは準備があるんでな!またな、ロゼッタ」


「ちょっ、ライカさん!?」



ライカがリコリスの右手を掴んでは歩いて立ち去っていくのをロゼッタは眺めていて、目を細めてリコリスの背中を睨んで見つめていた。



「………絶対に、赦せませんわ」


「あのビッチから、絶対にシャルル様を救うのが私の役目ですものっ」


「あの方を目を覚まさせてあげなくてはっ」



ロゼッタは懐からシャルルの隠し撮りの写真を恍惚な表情で見つめては、優しく抱きしめては少し嬉しそうな表情をしている。



「待っていてくださいまし、シャルル様を惑わす女は私の財力をもって排除いたしますわっ」



ライカはリコリスを連れて歩いていると途中で止まっては後ろへと振り向き、後ろにいるリコリスを見つめている。



「なぁ、リコリス」


「ん?どうしたの??」


「……いや、そのー……春になったら、皆で花見パーティをしような!」


「花見パーティ??」


「おう!久々に、皆で騒いで楽しもうぜ?」


「うん、そうだね!」




(ごめんね、ライカさん)


(それは、果たせないや)




毒殺されるまで、あと一週間。






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