7
「香奈恵さんっ!」
友樹が口にした名前に、梨音は目を丸くする。
その名前こそ、梨音に友樹が自分のことを気持ち悪いと言っていると教えてきた子の名前だ。
「
友樹が
「こんな
「……」
そんなふうに言われて
梨音が何も言えずにいると、香奈恵は、周りにいる囲碁部の部員を
「
「
立ち上がった友樹は、地面に
でも香奈恵は、友樹の
「お父さんから、友樹を連れてこいって電話があったの。行くわよ」
「……」
友樹が困り顔で、梨音と碁石を
その表情で、彼にとって急がなきゃいけない
「大丈夫です。行ってください」
囲碁部の部員らしき男女の生徒も、梨音と一緒に碁石を拾い始める。
香奈恵にしつこく腕を引かれる友樹は、梨音に「ごめん。続きは今度……」と謝りその場を離れていく。
当然のように友樹の腕をひっぱて歩く香奈恵は、一度梨音に視線を向けて、わざと聞こえるように言う。
「受かるかどうかわからない見学の子なんて、真面目に謝る必要ないわよ」
香奈恵のその言葉は、碧海学院附属のレベルの高さを考えてのことだろう。
確かに梨音の成績では、合格は
自分自身、合格なんてあり
「せっかく
碁石を拾う男子生徒が、梨音に言う。
「あの女の人は?」
「
そのまま石
「それだけじゃないわ。槙さん、仁藤君のこと好きだから、他の女子が彼と
そう不満の声を上げるのは、碁石拾いを手伝ってくれる女子生徒だ。
石を拾い集めながら、女子生徒は「きっと、今のも嘘に決まってる」とぼやく。
(な、なんですと!)
心の中で叫ぶ梨音の頭の中で、昔の
確かにあの時も、友樹に
ただ小さかった梨音は、友樹と仲良くしていた香奈恵の言葉を
今も昔も香奈恵の言葉に振り回されて、友樹との関係を
(一度逃げて、
さっき、友樹に
「すみません、後お願いします」
梨音はそう言って立ち上がると、そのまま二人の背中を追いかけて走り出す。
「梨音君?」
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