6
「よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしく」
イスを引いて
「あの……
イスに
「プロ
「……プロを
「今も」という言葉をどうにか
「うん。親にも
もしかしたら友樹は梨音がバカにしていると思ったのかもしれないけど、もちろん梨音にそんなつもりはない。
てっきり囲碁を
「えっと、おう……」
「
「梨音君、がんばってっ!」
はしゃぐ芽衣の声に、また「
「カノジョ?
そんな
「
「そう。ごめん」
このまま男の子と思われているのはいいけど、芽衣と付き合っていると思うのは
「本当に、違いますから」
梨音は、声を低くして
梨音の
それを手伝おうとすると、友樹は
「碁石は僕が片付けるから、それに名前を書いてもらってもいい?」
ノートと一緒にボールペンが置かれていて、「一局目」「二局目」と書かれたワクの中に名前の他に、
「
梨音の言葉に、友樹がうなずく。
「
昔、梨音と友樹が
子供の頃、全くレベルが違う梨音と友樹が
(
まだ
「えっと、梨音君より、
ノートを
「
子供の頃の棋力を書く。
「わかった。六級だね」
「下手くそで、すみません」
ボソリと
「大丈夫だよ。まずは囲碁を楽しんでもらうことが、大事だから」
ニッコリと笑って話す友樹に、子供の頃を思い出す。
昔もこうやって優しく笑って、梨音に囲碁の楽しさを教えてくれたのに……
(友樹君を思い出すのが嫌で、囲碁自体やめちゃったんだよね)
こうやって碁盤を
友樹は、梨音の目を見て少し考えてから口を開く。
「六級だと
「いりませんっ!」
置き石とは、レベルが違う人が
梨音と友樹の
梨音の声に、友樹は少しだけ
「わた……僕の実力に合わせる
彼に嫌われたからと、
それに、自分が囲碁を打たなくなった後も、努力を続けていた友樹の
「だけど……」
友樹は
二人の実力差では、勝負にならないと思っているのだろう。
「手加減してもらわなくても、囲碁の楽しさは知っています。だから、わた……僕に、ちゃんと努力してきた仁藤さんとの実力を知るための勝負にしてください」
梨音の言葉に、友樹は
「一ノ瀬君は、強いね」
「え?」
「負けて悔しい思いをするのが嫌だからって、言い訳の
「それは……」
そのとおりだ。
梨音も、友樹に嫌われて、彼のことを思い出すのが嫌で囲碁を
でも今、昔と変わらない気持ちでプロを目指す彼と再会して、梨音の
「一度
碁石を戻し終えた友樹は、そう断言した梨音を真っ直ぐに見る。
「わかった。じゃあ、
そう言って友樹は、白石の入った
それに応えて、梨音が黒石の入った
「……四、五。じゃあ、僕が白石で」
それだけ言うと、石を碁笥に戻し、お
それに応えて、梨音は反対側の同じ場所に白石を置く。それに応えて友樹は次の石を置けば、梨音も少し考えて次の石を置く。
言葉を必要としないやり取りに、梨音はずっと忘れていたワクワクした
(子供の頃、人と話すのが
「……さくらちゃん?」
お互いに
「――っ!」
両親が離婚する前の
「ごめん。一ノ瀬君の打ち方を見てたら、
梨音の反応を見て、初めて自分が呟いていたことに気づいたらしい。
言い訳するような友樹の言葉に、梨音の指から碁石が落ちる。
「に、仁藤さんの初恋の相手は、……さくらちゃんて名前だったんですか?」
「そう。苗字は知らないんだけど、さくらって名前の子で」
その言葉に、梨音はあることを思い出した。
二人が通っていた碁会所は、名前と棋力を書いた
確かに、「
「その子も囲碁を打つんですか?」
友樹の言う「さくらちゃん」は、自分とは別人かもしれないと考えて、
「小学校の頃、同じ碁会所に来ていていたんだけど、すぐに囲碁に
「へ?」
身に覚えのない話にキョトンとしていると、梨音の
「変な話をしてごめん。多分僕はまだ、彼女のことが好きなんだ。だからつい……」
拾った石を碁笥に戻す友樹は、対局を再開しようとするけど、梨音としてはそれどころではない。
「あの、さくらちゃんが囲碁を嫌いになったっていうのは、誰から聞いたんでしょうか?」
梨音の質問に、友樹はなんでそんなことを聞くのだろうかと、不思議そうな顔をする。それでも自分の呟きがもとで始まった話だからか、素直に答えてくれた。
「通っていた
友樹のその言葉に、梨音の
梨音に、友樹が自分のことを嫌っていると話したのも、友樹と同い年くらいの女の子で、確か名前は……
「友樹、こんなところで何にしてるの?」
驚いて顔を上げると、碧海学院附属の
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