第37話
木内は阪ノ上を見送りに外へ出た。
「阪ノ上先生、ありがとうございました。」
「いえいえ、僕も運転係、しましょうか?」
「本当に腰が低いお方ですね。全然大丈夫ですよ!今回の事件も、先生のおかげで解決にいたることができました。心から、感謝しております。」
「いえいえ。僕はそんな。というか、やっぱり、酔ってなかったんですね(笑)」
「そっちですか(笑)」
「これからも、996係の存続を、僕から強く押しておきます。」
「ありがとうございます。何より頼もしいです。私たち996係は、もっともっと、成長を続けます。とても楽しみです。」
「では僕はここで。さよなら。またの機会に。」
「阪ノ上先生、ありがとうございました。」
「ひとり乗れないな。これだけで来るのと、飲まないやつが少ないしな。」
「私、歩イテ帰ルヨ。」
「いや、若い子の夜中一人はやめとけ。」
「エッ?私近いし、大丈夫ダヨ!」
「うぃー。気持ち悪ぃー。」
「おいおい、大丈夫か?あかり、悪いな。気をつけろよ。なんかあったら俺に連絡だ。」
「ハーイ!」
「智恵サン、ジャアネ!マタ明日!」
「うん!明日から、健君もホワイトハッカー部署よ!楽しみにしてるわ!夜道には気をつけるのよ!」
「ハーイ!」
多くの車が全て去った後、ポツリと、あかりは。
「ホントは、結構遠インダヨネー。デモ、間違ッテナイ!」
歩くあかりに、大きな車が迫ってきた。
キキーッ!
「キャー!」
あかりは、うずくまり、動揺を隠せない。だが。
「やあ!あかり!」
「アッ!たけるクン!」
「送っていくよ。僕、これでも、車免許持ってて運転できるし。」
「アリガトウ!場所、知ッテタンダー!来ればヨカッタのニー!」
「酔えばちゃんと話せなくなっちゃうかな、
って思って。」
「エー!別にいいジャン!ソウイウ席!デモ、アレはカナシカッたナ……。」
「なに?」
「私モ、たけるクンも、刑務所デノ面会、会話ノ仕方、防犯カメラを叔父サンがハッキングシテるダロウカラ、ッテチョットオカシナ隠したヤリトリしてタヨネ。」
「そうだったね。かなりおかしかったね。バレなかったけど。」
「面会室を出るトキニ、『必ず刑務所から出るから!その時は、プロポーズするよ!』ッテ、確か二、叔父サンは惑わさレルダロウケド、私は悲しカッタ。」
「どうして?」
「ダッテ、本気ジャナイプロポーズは、ドンナ理由デアッテモカナシイヨ。」
「僕、本気だよ。」
「エッ?」
「だから今日は酔わないように迎えに来た。罪も晴れて、堂々とあかりにプロポーズできるように!僕と、結婚してください!」
「エー!ウン!モチロン!……アッ!たけるクン今日からあかりのお家来ナイ?私、一人ダヨ!」
「ありがとう!僕も帰るところがなくて、家が見つかるまで留置所に泊まる、って言われてたんだ!行っていいの?」
「たけるクンがイイナラ、私はウェルカム!」
「僕も!」
「じゃあ今日から一緒に住モウ!アッ、コノ車ハ、ドウシタノ?」
「ああ。お父さんのがそのままあったから、使わせてもらおうと思って。お金は今はないけど借りたりはしてないし、発生しないよ。」
「ソッカ!」
「結婚届は、明日朝一で出そうか。僕が警視庁ホワイトハッカー部署の初出勤日の前に!」
「ウン!」
「あと、料理は僕がやるよ!お父さんお母さんが共働きで、他のも全部、僕が率先してやってたし、家事の上手さには自信あるよ!」
「スゴイネ!私がたけるクンの役に立テルコト何モナイジャン!」
「いや、いーっぱいあるよ!あかりがいてくれて、僕はこんなに変われた!僕の冤罪も晴らしてくれて、刑務所から救い出してくれた。引きこもり生活からも、抜け出させてくれた。元気になれた、コミュニケーションが楽になった。ホワイトハッカーという素晴らしい仕事に誘ってくれた。家族を失った悲しみを癒してくれた。そして、僕の大切なひとと、なってくれた。僕の人生の、最高のひとだ!」
「アリガトウ!たけるクンにソウ思ッテモラエテウレシイ!ソレニ、結婚ナンテ、コンナ私にハ、一生デキナイと思ッテタ!」
「それは僕もだよ!一緒に歩んでいこう、あかり。」
「ウン!アリガトウ!たけるクン!」
次の日の朝。
「あかりちゃん、健君!」
「今日は一緒に歩いて?」
「いえ、僕が、車を運転して、隣りにあかりを!」
「へー。どうしたの?」
「一緒ニ住ンデルノ!」
「えー!そういえば、その指の、何ですか?」
折り紙の指輪。緑、青。
「結婚指輪です!」
「えー!マジで?二人結婚したん?」
「はい!朝一で婚約届を出してきました!」
「って言うか、その指輪って、まさかの折り紙?」
「私が緑が好キダカラ、オッテ、たけるクンにアゲテ、たけるクンは青が好キダカラ、オッテ、あかりにクレタノ!」
「普通、逆じゃない?好きな色の方をつけるんじゃなくて?」
「見たら、あかりのことを思い出すんです!離れていても。あかりも、僕のことを!あかり!そうだよね!」
「ネー!」
「うわー!アッツアツの新婚夫婦だね!」
「緑、下手じゃない?あかりちゃん!」
「ソウカナ、頑張ッタンダケド、細カイノ苦手デ……。」
「僕の給料が貯まったら本物買うからね!」
「ナクシタラカナシイカラコレガイイヨ!」
「生活も、どうしてるの?」
「家事全般は僕がやってます!あかりちゃんの部屋、散らかってました!」
「アト、たけるクンのお料理、スッゴクオイシイノ!今日のオニギリのツナマヨモ、楽シミダー!」
「あかりちゃん、何もやってないじゃん!」
「いや、僕は、隣りにあかりがいてくれることが、生きていく支えなんです。僕はあかりのためならなんでもできます。僕の未来は、あかりがくれたものです。そして、家族を失って、希望は消えた。そんなところに、あかりは、僕の心にあかりをともしてくれたんです。」
「そうかー。あかりは健君の996係だな!」
「そうですね!」
「なんか今日、健君、いい匂いだね。」
「昨日、私と、お風呂で、洗い合いっこシタノ!」
「もうそんな仲なのね……。」
「コレカラは私が毎日お風呂入ッテー!ッテ、言うカラネ!たけるクン、お風呂嫌いミタイダケド、毎日言うカラネ!」
「は、はいー!」
「なんか、いいコンビやん!」
「良かったね!二人とも!」
警視庁職員入り口前に着くとそこには阪ノ上最高裁判所長官の姿が。
「アッ!阪ノ上センセイ!」
「阪ノ上先生、この度は本当にありがとうございました!あかりから聞いています!実は今日から警視庁でホワイトハッカー部署に勤めることになって……」
「うん。そのことなんだけどね。ちょっといいかな。あかりちゃんと健君、借りますね。」
「は、はいー。」
阪ノ上はあかりと健を連れて行った。よく見ると、後ろには福多警視総監も。
「福多さんまで?なんか不具合あったんか?」
「悪い知らせでなければいいのですが。」
「心配ね。祈ることしかできないけれど。」
阪ノ上と福多が、あかりと健をつれて戻ってきた。
「例え、何があっても極秘に、出来る約束をして頂けますか?命をかけてでも。」
「ああ。重いが、何か大事なことなんだろう。みんな、いいな?」
「はい!」
「命に代えてでも、他言しないでくださいね。そもそも、他言すると消されるかもしれませんが。」
「わかりました。約束します。」
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