「人情警察〜警視庁捜査課９９６係」

第36話

「大変だったよね。よく頑張った！」

「アリガトウ！」

「このひとも、悪いことをしたことに気づいて人生を大切に生きていってほしいね。」

「岩田サンは、怒りの感情とかナイノ？」

「自分で言うのも、恥ずかしい話だけど、それが、全くわからないんだよ。怒りとか。例え自分に直接、嫌なことをされても、その相手が、悪いことに反省して、成長するために、僕が役に立てていたならいいな、っていつも、思うんだ。」

「ヘー！岩田サンは仏サマダネ！」

「いや、警視庁に出勤の、行きと帰りに毎日、必ず、通り道のお地蔵さまに、『今日も一日お願いします』って手を合わせているんだ。お世話になっているよ。」

「ソウナンダ！マスマス仏サマ！」

「でも、この間、ものすんごく久しぶりに、怒りの感情が湧いてきて。ああ、人間らしい気持ちだ、って感じたよ。自慢じゃないよ、僕の心の性質の話、ね。」

「ソレガ普通ダヨー！」

「でも、僕はお風呂に入ると、どんな嫌なことも、ぜーんぶ、忘れられるんだ。僕の、強みかな。」

「そうだねー！」

「戸田謙介警視監！」

「戸田サン！来テタンダ！ワーイ！」

「あかりちゃん、大活躍だね！ハ、ハーヒフーヘホー！あれ？どっかにバイキンマンが！」

「エー！ドコ？イナイヨ？」

「ははは！またそのうち出てくるよ！ハーヒフーヘホー！あっ！また！」

「戸田サン？」

「ま、まさかー！そんなことないよー！」

「楽しいね！あかりちゃん！」

「ウン！岩田サン！」

「僕、業務に戻らないと。次々訪問者さんがくるから。」

「ソッカー。戸田サン、アリガトウ！」

「僕も、そろそろ行くね。楽しかったよ、ありがとう！」

「ウン。岩田サン、アリガトウ！」

「じゃあね、あかりちゃん！」

「またね！」

「ハーイ！」

あかりも歩き出し、福多を見つけた。あかりは走っていく。

「福多サン！」

「なあに？あかりちゃん！」

「アノネ、たけるクンを、警視庁のホワイトハッカーに私と一緒に、任命してくれない？」

「いいねー！すごくいい！健君が来てくれたらあかりちゃんも、嬉しいね！警視庁としても、貴重な人材として、温かく迎えるね！健君に、話してみます！」

福多は、警視総監として事件の処理が終わり、団欒中の仲間たちの元へ。

「９９６係と一課の一部メンバーに報告があります！」

「健君が、ホワイトハッカー部署に正式配属されることが決定しました！」

隣りには健が！

「よ、よろしくお願いします！」

「あかりちゃんから打診があったの。健君を、ホワイトハッカー部署に起用してはどうか、って！」

「たけるクンと、ソノ約束シテタノ！オニギリ食ベ終ワッテ、薬丸サンカラＬＩＮＥキタ時ニ！」

「それって、一番最初よね？この捜査の始まりの。」

「ああ。俺が、ＬＩＮＥであかりに来るなら来い、って。」

「そうです！あのとき、ＬＩＮＥで、こんなに証拠まみれの僕を信じてくれて、９９６係のひとはもちろん、一課のひとも、いいひとだ、ってわかったんです。」

「な～んだ！知ってたんすね！」

「すみません。」

「ええって、ええって！そんなんあたしら気にせぇへん！」

「まあ、健君、就職おめでとう！」

「はい！これから、頑張ります！」

「健君は十分、頑張ってるわ！そして、みんなも頑張ってる！そうね！たまにはパーっと飲みに行きましょうよ！」

「智恵ちゃん酒強いからな……。俺はジュースで……。」

「わあ！楽しい宴会よ！」

「アレ？たけるクンは？」

「どっか行っちゃったな。連絡してみたら？」

「ウン、交換シテテ、知ッテルカラ、シテミルネ。」

木内は仕切る。

「みんなでパーっと呑みに行きましょうよ！たまには！は〜い！いるひとみんな集まって！阪ノ上先生も、ぜひご一緒に行きませんか？」　

「は、はい！喜んでー！」　

「智恵ちゃん、酒、超、強いからなー！俺はジュースで……。」

「薬丸警部、この顔でお酒飲めないの、よく忘れます。」　

「ひとは見かけじゃないもんだー。」　

「心のプロらしからぬ発言やん！」　

「えーっ！小林さん、いつからそんな心のプロフェッショナル思考に？」　

「違う違う！まだまだやわ！でも、やめられん！辞めたくなるときもあるで。でも、あたし、結構、乗ってきたわ！」　

「本当のところをあえていうなら、移動、とかも平気であるんだよね。上からの命令でポイっと。」　

「そうね。いつまで続くかわからないこのかけがえのない日々を、大事に歩んで行きましょう。いつここから旅立っても、後悔しないように。」　

カウンターでひとりの阪ノ上を、木内は見かけ、様子をうかがって近づいた。

丁寧に会釈をする木内。　

「お隣、宜しいですか？」　

「ええ。もちろん。そんなに固くならないでください。」

「ありがとうございます。」　

隣に座る木内。

「お酒は、お飲みになられるのですか？」　

「やめてるんです、ゼロ。煙草も。身体のために。本当はお酒めちゃくちゃ強いんですけどね。っていうか、そんなに敬われるの、苦手なんですよ。」　

「えーっ！あなたは素晴らしいお方ですよ！権力も、地位もある。そして仕事ぶりも、たくさんのひとに、評価されておられるのに。」

「もっとフランクに話しましょう。僕は権力はすごく大切にしているけど、偉ぶるのは嫌いなんだ。」

「知ってます。そこが先生の魅力なんですよねー！たくさんのお弟子さんにも、ホシにも神的存在と呼ばれて。」　

「やめてください、恥ずかしい。」　

「阪ノ上先生ね、もっと表舞台に出たらいいじゃないですか。偉ぶるのが嫌いだとしても、私には先生が、影の立役者に収まるのがもったいなくてもったいなくて、と思うのですよ。」　　

「何を言うんですか。あなたこそ表舞台に威厳を出しましょうよ。課長として絶大な権力を握っているのに、華やかなところは全て薬丸警部たちに任せて、自分は裏でそっと助ける存在でしょう。その方が僕には尊敬の念ですね。」

「ありがとうございます。先生からそう言って頂けてとても嬉しいです。でも、そもそも私のことを、どうしてそんなに知っていてくださるの？」

「全ての裁判官を始め、警視庁の刑事全て、検事、弁護士、県警から交番、全てのホシ、服役中の受刑者、そして刑務官。情報は詳しく、調べ上げてますね。適当に済ませる道もありますよ。でもそれは、自分を優先して、ひとの一生を踏みにじることになるからね。僕はそんな最高裁判所長官にはなりたくない。」　

「はぁーー！やっぱり神ですね！私はーお金のことで頭がいっぱいですよ！ゼニ！ゼニ！お金があればー、何でもできるー！何かガッポ、ガッポ〜、一商売をー！」

「酔ってますね（笑）」　

「いえ、酔ってはいませんよ。本当に。これが本性なんです（笑）警視庁ではとても見せられませんよ（笑）」　

ぴょこっ。　

「阪ノ上先生！智恵サン！」　

「あかりちゃん！いつのまに！」　

「やあ、どうしたの？」　

「私モ一緒ニお酒飲む！オトナ！」

「成人ー、はしてるけど。飲ませて大丈夫かしら？先生。」　

「薄ーく、炭酸水多めに割って頼んでみようか。」　　

「そうね！あっ、すいませーん！」

「来たぞー、あかりちゃん。」　

「ワー！ヤッター！」　

ゴクゴクゴクゴク。

「えっ！一気飲み！ゆっくり飲みなさい！大人は、ゆっくり嗜むのよ（笑）」

「ソッカー。オイシカッタ！」　

「智恵サンも、阪ノ上先生も、すごいヒトダよネー！」　

「聞いてたの？」　

「エ？見タラワカルヨ！」　

「あかりちゃん、智恵さんをよろしくね。一緒に一商売、やってあげて！智恵さんの夢だよ！」　

「ハーイ！ワカッタ！」　

「あかりちゃん、健くんと大活躍だったね！そういえば、健君には声かけたの？飲み会の。」

「たけるクン、ＬＩＮＥ交換してたから、呼んで誘ったンダケドナー。来ナカッタ。」

「そっかー。事件も終わりたてだしね。自由になったとはいえ、思うところがあるのかもね。」

「健くんも呼べばよかったね。」

「ソウダネ！恥ずかしガッテたケド、強引デモ、誘って楽しいコトダッテアルしネ！結局来なかったナ……。」

「そうね。あー！みんなつぶれてるー！もう帰りましょうか。」　　

「智恵ちゃん。俺、車出すよ。一滴も飲んでねーし。」　

「そうね。お願いするわ。」　

「警視庁職員集団、飲酒運転で逮捕、なんて笑えんわなー！あー、頭痛いわー。」　

小林の笑いに、木内は微笑み掛け声を出す。

「お酒飲んでないひと運転係、お願いしまーす！帰るわよ！みんな、楽しかった？」　

「うーっす……。」　

「もう、ベロンベロンの集団だな。楽しかったのは、間違いない！」　　

薬丸は木内にウィンクをした。