第27話

「あかり!あかり、でイイヨ!君はたけるクンネ!アッ!LINEダ!薬丸警部カラ!」 

「君は職員なの?そう見えなかったよ。」 

「素直ダネ!エーット、『ホシの名は、湯上健。強行凶悪犯、両親、祖父母のコロシの疑い、証拠は揃い、もうすぐ逮捕、起訴、ムショ行きだ。だが、俺らはこいつはやっていないと思う。一課と996係、心の捜査をする。あかり、お前も来るのか?来るなら来いよ。連絡を待つ。』……ッテ、コレ、たけるクンのコトダネ!ソウイヤ、後ろニずっとツイテルのハ監視官サンだよネ。」 

「そ、そうだね。そんな風に思ってくれていたんだね。刑事さんたち。いいひとたちだよ。僕、聞いちゃってよかったのかな?」 

「イイんジャナイ?別に気にシナイでイイ!ソレで怒るヒトたちジャナイし!ソレヨリ、たけるクンの、冤罪。私が晴らしてみせる!頑張るヨ!」 

「たけるクン!」

「なんだ?あかり。」 

「たけるクンは、お仕事ッテ、イヤ?」

「ううん。働ける場所がないだけ。僕はひとりで自宅でパソコン得意だからハッカーしてるけど、こんな僕をやとってくれるところはなくて。」

「ヘー!コンナ僕、ッテ何が気にナルの?」

「そうだな。コミュニケーションもあまりできないし。僕、アスペルガーなんだ。小さい頃から周りと上手くいかなくて、人間が怖いんだよ。」

「私、実は自閉症の診断を受けてるノ。」

「えー!仲間じゃん!確かにおんなじ匂いはしたけどね!あっ、西井さんが言ってた子って!……なるほど。」

「ン?ねぇ、たけるクン!あかりと警視庁でハッカーしない?福多サンに聞いてみるヨ!警視総監なんダ!きっと喜んでくれるヨ!」

「あかり、ハッカーなの?」

「知らなかっタ?」

「ああ、なんだか楽しそうだね!あかりはいいのか?」

「ウン!警視庁のホワイトハッカー。私もひとりだからトモダチほしかったんダ!」

「ありがとう、是非させてくれるか?何だか希望が湧いてきたよ!未来は僕にはない、って思ってたし、死ぬことばかり考えてた。」

「私もそういうときアッタ。でも、生まれたなら、生きるコトが仕事、なのかな、って。誰かから、死ねって言われたとシテモ、ソンナ権利は、相手ニモ、そして自分にサエもナイ。神様から与えられたこの世で生きる修行なんだ、ッテ思うようにナッタ。」

「そうだな。そしてその生きる中で、誰かの役に立って、大切なひとを幸せにして。生きる、ってこんなに嬉しいんだね!」

「福多サン、福多警視総監も、たけるクンの今回の事件の捜査にすごく関わってくれてるノ。福多サン、総監なのに捜査に出るひとなノ!」

「そりゃ、いいひとなんだろうね!」

「じゃあ、言っておくネ!私そろそろ仕事に戻らないト。部署に山積みに仕事がアッテ。」

「ホワイトハッカーの?」

「ウン!たけるクン、今度は一緒に戻ろうね!」

「ああ!もちろん!あ……、あかり。僕の全てを、君に捧げてもいいか?」

「エッ?初対面デのプロポーズ?」 

「いや、違うよ。忘れてくれ。」 

「ナニー!気にナルヨ!デモ、ジャアネ!マタネ!」 

あかりは走って警視庁内へ向かう。 

浮かない顔の健。

あかりが去った後、玄関の方へ歩く健と監察官。


 警視庁玄関周辺で、監察官は健に告げる。

「時間を気にしろよ。他に行きたいところはあるか?警視庁敷地内なら許すと出ている。」 

健は、気づいた。

「あっ、西井さんだ。でも誰かと話してる。」 

玄関から出てきた一本杉と西井。向こうは健に気づいていない。 

遠くから会話を聞く健。 

「一緒に外、出てみたのはいいけど。みんなずっとどうしようか、って言ってるしね。」

「そうだ。全然関係ないんですけど、西井さんって、警視庁にある小さな図書室知ってます?」

「うん。知ってるわ。」

「あそこの図書委員、本を買ってくる係、西井さんなんじゃないかと思って。」

「当たり!よくわかりましたね!」

「セレクトが西井さんっぽいし!西井さんがくれた写真はがき。しばらく前、図書室にもはがきと一緒のような遠くの地のパンフレットがあって、そのとき、ああきっと、西井さんの足跡だなー、って思って見てました。」

「ふふふ。本、好きなんですか?」

「本は普段あまり読まないんですけど、あの図書室に時々後ろの方にそっと置かれている新しい本を見つけるのにハマって。」

「バレたか(笑)」

「置き方も西井さんらしいなー、って思いながら、全部本はひと通り見ています。安く手に入る古本や、心についての関係の本、西井さんセレクト。僕は結構好みです。」

「よかった。喜んでくれるひとがいて。」

「あ、アプローチじゃないですよ。大丈夫。心配しないでください。僕、一応結婚してますし。夫婦はちょっと危ないですけど、僕によく似た子どももいます。警戒心、強かったですよね。すみません、変なこと言って。」

「わかってますよ!気づかってくださってありがとうございます。」

「図書室行きませんか?」

「いいですよ。あー。思い出す。昔、あかりちゃんの起こした事件のこと、聞いたことあります?」

「ああ。不法ハッカーで捕まったんでしたよね。」

「あのとき、刑事の会で研究をしたんですよ。これでもか!ってほど自閉の勉強して。ウチの子も自閉なんですけど、改めてあかりちゃんに学びました。」

「へー!」

「そのときの資料を、ウチにあった分を図書室に寄付したの。まだ残ってるかな?健君もアスペルガーだし、なにか役に立つかも。あかりちゃんにも見せたいなー。興味ないか。あかりちゃん、よく図書室で見かけるんだけど、何してるんだろ?」

「図書室と本、見に行きましょうよ!」

グゥー。お腹が鳴る音。 

「昼メシ食ってなかったなー。」 

「売店、行きますか。」 

西井と一本杉は警視庁に軽く会話しながら入る。

その様子を見届けた健が、さらにハッ、と何かを思い出したかのように口を開く。 

「……。僕、探検したい!警視庁の敷地内ってことは、警視庁の中もいいんでしょ?お願い!ねっ?逃げないから、ひとりで行っていい?」 

「ダメだ。私が監察官としてつくことが条件で出ただろう。」 

「じゃあー、時間集合で、来なかったら僕を逮捕したらいい。早く認めてほしいんでしょ?本当は僕はやっていないけど。」 

「……。上に確認する。」

監察官、電話で確認を取り終える。

アラームをポケットから出しお互いにセットする。

ピッ。 

「このアラームが鳴った時点でこの場所に戻っていなければ、わかっているな。確実に約束は守れよ。さもないと自分で自分の首を絞めることに……。」 

「ありがとう!」

玄関前に黒の大きな車が止まり、たくさんの刑事が出てくる。

「ストーカー殺人事件の例のホシの家宅捜索!ガサ入れ終わりましたー!物的証拠、山盛りですよー!」 

「いってきまーす!あっ!」 

刑事たちと健がぶつかり、証拠品がばら撒かれる。

「ごめんなさいー!」

「クソッ!前見て歩け!」  

「拾うの手伝います!許して下さい!」 

監察官は呆れた様子で

「はあ。自由な少年なのか。」 


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