第11話
「ザザザ…こちら警視庁捜査一課水野。捜査課996係応答せよ……ザザザ…聞こえているのか……」
「はーい、あゆたん。こちら薬丸さんだよ!どうしたー!何かあったのー?」
「毎度、呑気ですねー。薬丸警部。もう大変なのよ。大至急、応援に来て!連続刑事殺傷事件。連続刑事殺傷事件、……ってどうしたらいいんですか!」
「うん、あゆたん!大丈夫だよ!僕がすぐ行くからねー!」
ピッ。
「さーあ。あゆたんが待ってるぞ!お約束の一服も済み、今日のおやつはーおにぎりせんべい!これ、たまに食べると、めっちゃ美味い。バリっ!うんめ〜!さあさあ、行くかお前ら!……って何してんだー!早く吐いて楽になれ!まず兒玉!」
「はーい。僕、夜に弱いんで、寝てまーす。」
「そうかー。お前が、夜に弱いなら仕方ないなー。……って仕事中に寝るな!ってそもそも今、まっ昼間!もう!尾野君は?」
「はいっ、すんません、お願いします!」
「尾野、この返事ー。パソコンしてー。おーい、聞いてるか?尾野ー?小林!お前は……」
「携帯ゲーム中や!話しかけんといて!」
「話しかけるわ!今、一応大事な場面!仕事中!西井ー!」
「薬丸警部が、お約束のタバコとか、今日のおやつ、とか言ってるからですよ。親の背中を見て、子は育つものです。」
「西井、お前は立派になってー!……厳しい。さあ、お前ら行くぞー!」
「あら、どうしたの?」
「はっ!木内課長!」
「智恵ちゃん、大変だ。あゆたんから、連続刑事殺傷事件だってよ。結構ヤバくね?」
「そうね。水野さんは、もうここに……。」
「薬丸警部ったら!困ってたんですよ!」
「おお!あゆたん、ごめんよー!……じゃあ、早速教えてくれるか?」
「はい、もちろん。」
「まず、どんな事件なんですかー?」
「今回の事件、連続刑事殺傷事件は、路地裏で、昼下がりに起きる傾向があります。一課の刑事も殺傷被害にあっています。使われているのは、鑑識の結果、ホームセンターで売っているような、ナタだそうです。」
「ひぇー、ナタ!怖いやん!」
「犯人の目星は?」
「それが、一課も捜査に奮闘しているのですが、なぜか全く犯人の特徴にすら辿り着きません。」
「一課でも難しいんですね。」
「手を抜いてるだけなんじゃね?」
「そんなことありません。ちゃんと捜査してます!」
「それで、どの辺りで起きてるんだ?」
「この辺りで多発しています。これが事件が起きた場所の地図です。」
「ん?ここって、脇谷と小名呂の交番の担当区域。あいつらこの前、勤務交番移動したのに、今度も一緒になったんだよな。またタッグを組む時がきたようだ。」
「脇谷さんと小名呂さんの交番、行きましょうか。」
「そうね。」
交番。
「おー!脇谷、小名呂!」
「薬丸警部じゃないっすか!」
「お久しぶりですー。」
「連続刑事殺傷事件、知ってるか?」
「なんせここがよく担当区域に当たるので、自分たちも狩り出されてるっす。」
「そうだったな。で、来たんだよ。」
「何か、手がかりとか、ないですか?」
「うーん。あっ。昼下がりに出歩く刑事を見つけて、犯行するんじゃないでしょうか。それなら、こっそりついていけばある程度、被害者になる相手が絞れるかも。」
「おー。小名呂巡査、やるやん!」
「私、力が全くないので、捜査は頭脳派です。」
「もう、ほんとっすよ!他の事件の犯人確保も役に立たないしー。そうそう、この間確保した現行犯すごかったわー。」
「なになにー?」
「あなたたちはこんな人殺しみたいな仕事をしているんですか!」
「そうです♪」
「あなたたちは一体どういう気持ちでこんなことをしているのですか!」
「ハッピーです♪」
「この仕事、ハードすぎるわ。」
「もう金がもらえたらどんな仕事でもいいよな。」
「そ、そうだな。」
「兒玉っちがそう言ってくれると、代弁されたみたいで愚痴言いたい気持ち、すっとするね。」
「兒玉さんは僕らの代わりにいつも文句を言ってくれているのですね。」
「いや、兒玉さん、そこまで考えてないと思いますよ……。」
「あたしもプロとか言いながら、もうこの仕事向いてないわー。」
「でも、俺はこの仕事、楽しんでるぞ!」
「プロでも仕事に疲れたら文句も言いたくなるわ!薬丸警部は、きっと天職ね!」
「まあ、小名呂巡査は筋トレっすね!」
「ありがとうございました。帰りますか。」
M〜♪
「ザザザ……こちら警視庁一課水野!996係、応答せよ!」
「おー。あゆたん!どうした?」
「また犯行が起きました!現場に向かえますか?脇谷さんの交番付近で落ち合いましょうか。」
「おう。お前ら、行くぞ!今、丁度交番からの帰りで、近くだ!」
「それと交通課が、交通警備中に犯行を終えて逃げる犯人を目撃したようです!996係と合流するように伝えています!」
「おい、まさか……」
キキーッ。
「あら〜!また会ったわね!」
「中口知美!」
「犯人の落としていったナタ、ゲットだぜ!鑑識に回すわよ!私の後輩婦警がホシに叩かれたのよ〜。女に手を挙げる男は最低よ!それに亭主関白なんて、絶対いやよ〜!毎日、『愛してる』『可愛いね』って言ってくれる男がいいわ。」
「ホシは抵抗しただけでしょー。」
「あら。みんなそう。ええ。男はね、みんなそうよ。抵抗だって女に暴力を振るったら許せないわよ〜!当たり前のことよ。じゃあ、私はこれで〜。」
「中口、ありがとな!」
「犯行に使われたのは、やはりナタか。」
「そうやな。あとさ、ここら辺のホームセンター当たって、同じ種のナタを購入したひと探す、っちゅうのも、刑事の捜査っぽいやん?」
「それもやりました。その犯行に使われたナタが発売されたのは、最近の新商品で、売り出していたのはひとつのホームセンターだけでした。でも、購入したひとと時間を携帯で写真に撮っていた店員さんがいたんですが、そのひとたちは、アリバイがありました。」
「ちょっと待て。その店員怪しくないか?」
「私も思ってその店員に聞いたら、実は現役刑事で、ホームセンターで内緒でアルバイトをしていたそう。刑事殺傷事件も知っていたから、写真を撮ることにした、と。」
「名前は?」
「長里裕也、一課の中堅刑事でした。自分も私用でナタを買った、と携帯で写真も見せて証明してくれました。私の携帯にも、証拠写真を送ってもらいました。最近の日付だったので今回の事件とは関係はないと思います。」
「そうだな!」
「堀田鑑識課長!」
「ナタから、今までの被害者の血痕も出た。最近の日付っていうのが本当なら、そいつはシロだな。」
「良かったー。警察内部に犯人がいたらドキドキするわね。」
「写真、俺にも送ってくれ。被害者の目星はつくのか?」
「襲われるのは、だいたい中堅刑事です。襲われる場所も範囲が狭いですから、その場所に近づいた中堅刑事が、被害者になる可能性が高いかと。」
「一課に狙われそうな刑事っているん?」
「特に怯えている刑事が少しいます。何か知っているのかも。その刑事が出歩くとき、連絡します。許可を取ってGPSをつけて、小型モニターを996係に渡しますね。」
「小名呂も言ってたな。昼下がりに起きるのは、出歩く刑事を見つけて、だと。」
「昼下がり、中堅刑事。ついて行って、張り込みますか。」
「そうね。」
「OK?智恵ちゃん。」
「もちろんOKよ。」
「ザザザ……996係応答せよ。」
「はーい、あゆたん。刑事、出て行った?」
「そうです。GPSをつけました。モニターは、さっき996係部署前に置いておきました。」
「了解だ!」
路地裏。
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