第8話

ホワイトボードに書いている文字。

ホワイトボード。 映しながらメンバーの声。

「そもそも、ホシは、連続ひき逃げ事件をなぜ始めたんでしょうか。」

「何か心の中にあるきっかけだろうね。」

「一課では考えないような、私たち996係の心の捜査をしてみましょう。」

「そうやな。賛成。」

「お前ら、俺もだ。」


ガチャっ。

「智恵ちゃん。来てたのか。」

「ええ。」

「おお。次に来る時間を、メモでみんな書くようになったな。会わないこと前提?いや、会えるため?そうか。仲間の気持ちを相手に決めさせる配慮か。相手が会いたかったら会いにこれる。会いたくなかったら、時間をずらすことができる。……お前らは。」

「そうね。みんな、思いやりを忘れていないわ。」

「チームワークがあり、仲間だからこそ生まれた喧嘩か。こんなときにもお前らは優しさを忘れない。……もう。素直になれよ。」


ホワイトボードに書きこむ996係の姿を順番に、カラーでフェードが覆うように。


ホワイトボードが、映り、メンバーの声。

「なんもないのに、ひとは間違った道には進まんやろな。なんかの仕返しとかか?」

「心理的に考えれば、この子の場合、心身喪失ではないわね。何か思うところがある。そして間違った解釈をして、それを解決するために事件に至った。」

「そういえば、冤罪のホシが自首して嘘の自白をしたのが、僕は気になります。この事件に、何か思うところがあるのではないでしょうか。そしてホシの心が解決するまで、ホシの思いは終わらないでしょうね。」

「ただ捕まりたかった、より、事件に関係しているんだね。そうすると、冤罪のホシと何か過去にあるのかもな。」

「ホシの心の中を想像すると、苦しい気持ちが、きっと深いわ。まだ、何かあるのかも。きっと並大抵ではない、この『事件』への思いが。それも、計画的に。」

「たくさん悲しいことはあっただろう。でも、何がこいつを、そうさせたのか。」


「うーん。ホシの心は見えてきたが、それだけでは足りないのか。方向を変えるか?」

コンコン、ガチャっ。

「いたぞ。」

「おー。ホーリー!ゴホン。鑑識課長。」

「先程の鑑識結果の件なんだが。」

「何かわかったのか?」

「当たったすぐ後に、急ブレーキをかけていた。だから死者がでなかった。使われた所有者の車を調べても、当たりかたが柔い。一連の事件の傾向と言えるだろうね。」

「そうか。わかった。ありがとう。」


「俺は恋人のひき逃げが気になるな。命日とか知っとるかな。」


「こーなろ、こんにゃろ、こーなろ♪いるかー?」

「はいー。なんですかー?」

「真犯人の恋人の命日、ってわかるか?」

「えー。わからないですー。」

「そうだよなー。脇谷はどこ行った?」

「脇谷さんは今巡回にー、行く前に!」

「どうしたー、小名呂!」

「今日、溝口孝弥の恋人の命日だー、って話しました!真犯人でしたね。ごめんなさい。」

「お前仕事できんなー。ひき逃げがあった時間はわかるか?」

「これは本当にわからないですー。すみません。」

「おめぇも、頑張れよ!ありがとな!」

「はい!」


996係部署。

「命日って今日かー。おっ、みんな書き込んでるな!」

「交番の脇谷さんが言ってた、真犯人の恋人の事件現場の命日の花。気になって、聞き込みしました。そしたら、冤罪のホシの妻がその花を、毎年置いてたらしいですよ。」

「交通課に、真犯人ではなく、冤罪のホシのこと知ってないか軽く一応聞いてみた。冤罪のホシは、過去にひき逃げ事件を起こしていた。でも、持病の発作で、責任能力なし、無罪となったようだよ。中口さんって結構色々知ってるなー。」

「それ、あたしも昔の資料集めて、頑張って探したんや。ひと、一人亡くなってたらしいな。でも、発作がしゃーないってのもわかるわな。」

「真犯人の家宅捜索に同行したわ。置いていたカレンダーに『END』と書いてたの。それが、まさに今日の日付に。自殺でもするつもりかしら。」

「そういえば、冤罪のホシのことを調べた資料を作った、って最初にあゆたん言ってたな。えーっと、あった。冤罪のホシの名は、高嶋綾人。ひき逃げ事件を起こした日か。何年前だ……?日付、今日じゃん。起こった時間はもうすぐか。なんか怪しくなってきたぞ。高嶋綾人と溝口孝弥は繋がりはないのか?」


「ザザザ……こちら捜査一課水野!捜査課996係!至急応答せよ!聞こえているのか!」

「あゆたんだ。ピッ。おお!あゆたーん!どうしたー?」

「薬丸警部!急いで、ホシが逃げたの!」

「な、なんだって!」

「何か手がかりはない?何か事件が起きる前に確保しないと……。」

「おう、俺も当たってくる。今、ちょっと、仲間割れにより、ぼっちナウ。」

「えっ?とりあえず急いで応援にきてください。私は私で捜査に当たるので、薬丸警部も手分けして!」

「はいはーい!ピッ。さあて、どこに行った溝口孝弥ー!俺らの情報によるとー?お前らは、どうだ?……そうだ、いなかったな。いや、これ結構マジでヤバイ状況。思い出せ。考えろ……!」


メンバーの声回想。

「なんかの仕返しとかか?……」

「間違った解釈をして、それを解決するために……」

「ホシの心が解決するまで……終わらない……」

「冤罪のホシと何か過去にある……」

「まだ、何かあるのかも……それも、計画的に……」

「何がこいつを、そうさせた……」

「命日って今日かー……」

「冤罪のホシの妻がその花を、毎年……」

「冤罪のホシは、過去にひき逃げ事件……持病の発作で、責任能力なし、無罪……」

「ひと、一人亡くなってたらしいな……」

「置いていたカレンダーに『END』……」

「ひき逃げ事件が起こった日か。何年前だ?日付、今日じゃん。起こった時間はもうすぐか……」


「そういうことか!時間がない!仕方ない。一人で行くか。急げ!わかったぞ。ホシの、居場所が!」

M〜♪

急いで警視庁から出て走って駆け出してきた薬丸。車に乗り、智恵ちゃんに電話。

「智恵ちゃん!ホシが逃げた!」

「聞いたわ。薬丸警部、今どこ?」

「わかったんだ。ホシの行こうとしている場所が。」

「えっ?もしかして、今ひとりで向かってるの?」

「ああ。みんなの、心の捜査の結果と一緒にな。」

「ホシは、何のために?」

「うん。冤罪のホシの嫁が危ない。最後のひき逃げは、そこで起きる!」


キキーッ。薬丸、車を止める。

冤罪のホシの妻が、花を手向けている。

遠くから怪しい車が勢いよく走ってくる。

妻に車が突っ込んでくる。

薬丸が冤罪のホシの妻を突き飛ばす。

M止まる。




無音。

ホシ、驚いたあと目をつぶる。

薬丸、轢かれる。

音、再開。

ホシ、車で、逃走。

薬丸、静かに倒れている。

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