第7話

「あっ、交通課長!」

「ああ。一本杉君から連絡があったよ。今回のことは、中口知美がよく知っている。今、外に出てるから会ってきたらどうかな。」

「中口かー!」

「知ってるのー?」

「うん。関わるはずがないのに、腐れ縁なやつだ。」

「でも、いいひとよ!」


「おっ!おーい、中口!気づいてないな。」

「あら〜、もう。こんなところに車を止めたらダメじゃない〜。ごめんなさいは?ほら、とっととおどきになって!はい、さよなら〜グッドバイ、フォーエバ〜!」

「……あいつ、刑事やってていいと思うか?」

「あ……あれはあれで向いてるんじゃないですかね……。」

「あら〜!薬丸警部に996係の刑事ね〜。どうしたの〜?」

「ああ。連続ひき逃げ事件のことを聞きにきた。交通課長が、お前が詳しい、と。」

「もう、オジイったら、私に振ったのね〜。いいわよ。教えてあげる。」


「まず、お前がこの事件について知っていることを教えてくれるか。」

「そうね〜。交通課との情報と鑑識課の連携によると、ひき逃げに使われたのは、ホシの所有物の車。今、鑑識課に渡って詳しく調べているわ。」

「この事件の始まりはいつか、具体的にわかるか?」

「この事件の始まりは5年前。連続ひき逃げ事件の最初のヤマね。」

「5年前に、恋人を亡くしたからですか?」

「今回、真犯人逮捕で、私も調べたのよ〜。そしたら、恋人をひき逃げ事件で亡くしたのは、結婚式の日らしいのよ。交番の警察官、薬丸警部も知ってるでしょ?脇谷君。あのひとも今回の事件に色々と関わっているらしいわよ〜。」

「なるほどね。そういえば、交通課の業務ではあまりこういう事件は持たないんじゃないの?」

「たまたま居合わせちゃったのよ〜。交通警備で近くにいて、応援に行ったのよ。」

「そんなことあるー?」

「交番に行ってみたらどう〜?あそこも今回の事件、なんせ担当区域だから。脇谷君に連絡しておくわよ。」

「いや、それは僕ちょっとー♪」 

「兒玉君、ワガママね〜。しゃんとしなさい、男でしょ! 」

「さあ、交番に行くか。」

「じゃっ、そゆことで〜。ばいばい〜!」

「ありがとうな!中口!」


交番。

「おお、脇谷!お前の行く交番、担当地域の事件多くないか?」

「そうっすねー。ここは結構多いかもしれないっすね。」

「お前は事件をよぶ某名探偵だな!」

「いやー。事件に好かれて困ったものっす!でも、薬丸警部たちと捜査するのはなんだか嬉しいっすけどね。」

「こんにちはー。お客さんですかー?脇谷さん。」

「誰だ?」

「あー。交番勤務に新しく配属された巡査の小名呂巡査っす。歳は上っす。歳はー。」

「言わないでくださいー!」

「おめぇ、どっから来た!」

「えー……。怖いー。」

「俺を怖がるなんて、育ちがいいやつ!」

「大丈夫ですよ、小名呂巡査。薬丸警部はこういうひとです!」

「そうだ、脇谷。連続ひき逃げ事件、知ってるか?」

「ああ。知ってるっす。それと、ここの区域は、その事件のホシの恋人も、ひき逃げで亡くなったところっす。」

「そうなんだ……。」

「その命日に、毎年花束が道に添えてあるんす。その日に前を通ると、誰が持ってきたのかな、といつも思っていたんすよ。」

「へー。」

「鑑識課が結構、事件調査で関わっているから、この前、警視庁に顔出したときに鑑識課長とその話になったんす。」

「そうかー♪」

「兒玉君!静かにテンション高いな!昔、自分はまだ学生で交番にいなかったころ。自殺未遂でこの交番が関わって、そのときの資料が残ってたんっす。見ますか?」

「ああ。見せてくれ。」

「あー。えーっと、これです。」

「ありがとう。小名呂巡査。」

「辛い人生を生きてきたんだな。」

「僕らには何ができますかね。」

「無理矢理ではなく、寄り添い本当の『あなた』ホシを知ろうとすることかしら。」

「そうだね。鑑識課にも行っておくか♪」

「兒玉君。やる気でたなー!」

「うん。行こうか!」

「じゃあ、自分たちはパトロールに行ってきます。」

「ありがとうございましたー。」

「小名呂巡査もありがとう!」


鑑識課にて。

「鑑識課長、いますか?」

「ああ。鑑識課長は今、例の事件の取り調べ室だ。鑑識課長は事件が好きでな。」

「それマジで言ってんのー?」

「正しく言うと、事件を解決するのが好みなんだね。」

取り調べ室、裏。


「それはしてはいけないことだ。不適切だ!不適切。いいかー。メシをー、食うんだー。かつ丼だ。美味いぞ。さあ食うんだー。よしっ。以上だな!」

プルルルル。

「あっ。はい、堀田です。なんだと?それはいけないな。うん、わかったよ。必ず、僕が行くから!」

ピッ。

「じゃあ俺はこれで、失礼します!んっ!」

「相変わらずキャラ濃いなー。ホーリー。」

ガチャっ。

取り調べ室から出てきた堀田は気づいた。

「あっ、996係の皆様。良いところにいたぞ。このヤマの資料があって。取り調べ室に置いてきた!ちょっと待っててください!」

堀田、取り調べ室へ走っていき、戻ってきた。

「はいっ!あったぞ!じゃあよろしくたのんだ!電話の相手が待っているぞ〜♪」

ガニ股歩きで潔く筋緊張で突っ張って歩いていく。

「ホーリーは、素でこれなんだよなー!」

「部署に戻りましょうか。」




部署に戻って。

「収穫、たくさんあったわ!」

「そうやな!」

「木内課長?」

「ずっと話に入ってこないよねー。」

「なんか様子おかしない?」

「課長、どうしたのかな?」

「ううん、な、何でもないわよ。大丈夫。」

「智恵ちゃん!何かあったんだろう?言ってくれ。俺らはそんな智恵ちゃんが見てられない。」

「……。実は。」

「うん。」

「996係が、なくなるの……。」

「えっ?」

「そうなの。上の課から電話で。996係が廃課されることになったの。」

「仕事やめれる〜。」

「こんな時に何言ってんのよ!馬鹿じゃないの?」

「やめてよ。でも、前向きに考えましょう。新しい場所も、楽しいかもしれないし。」

「なんでですか!996係がなくなろうとしてるんですよ。どうして課長、反対してくれなかったんですか!ねぇ!木内課長!」

「智恵ちゃんを責めるな!智恵ちゃんは何も悪くないんだ。やめてくれ!」

「もういいわ。あんたらといれん!出て行くわ!」

「待て、小林!あっ、西井、尾野君!」


……。

「今から始まるところでごめんなさい。」

「……智恵ちゃんは悪くないさ。そもそも、なんで996係って作られたんだろうな?」

「僕らが心しかわからない、心のプロだからじゃないですかー?」

「そうかー?なんかひっかかるな。」

「ばらばらだけど、個人で捜査をしましょうか。」

「この事件を解決するという目的は変わらないからね。」

「ホワイトボードを活用しましょう。みんなが仲間への伝言板として。」

「仲直り、早くしたいなー。」

「前に進むぞ!捜査は俺らの責任であり生きがいだ!」

「ありがとう。じゃあ、私はみんなへのメッセージを書いておくわね。」


「これから、みんなの気持ちを尊重します。個人の捜査の結果を伝言板、ホワイトボードに書いてください。気持ちが収まったら、みんなで捜査を始めましょう。」

「俺らは心のプロなのに、自分たちのことになると、ダメだな。本当に。」

「みんな戻ってきてほしいね。」

「そうね。付け加えるわ。『きっと、大丈夫よ。これが最後の事件になるから、後悔のないように。』」


ガチャっ。

「おっ。みんなちょっとずつ、個人捜査進めてるんじゃないか。」

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