第6話

「ザザザ、こちら捜査一課水野。996係応答せよ。ザザザ、聞こえているのか……。」

「はーい。あゆたん!こちら薬丸でーす。どうしたー!またまた何かあっちゃったー?」

「相変わらずですねー。至急、応援に来て!場所は第1会議室。連続ひき逃げ事件……大混乱…犯人逮捕により緊急捜査会議にて……」

「うん、わかったよ!お前ら行くぞー!」

ブチっ。ザザザ、ザザザ。

「もう、警部ったら。」


「さーて、一服も済み、今日のおやつは柿の種〜!パクっ。ウマっ!さあ、お前ら!行くか!って、どうしたらそうなるんだ!自白しろ!まず兒玉!」

「いや〜、仕事に来るのが面倒くさくて〜寝てみました。」

「よしっ、よく職場に来れたことを褒めてやろう。 偉いぞ!兒玉!続いて小林は?」

「コンビニでレジ打ちの仕事がしてみたくてエアーレジ打ちの練習や!」

「もう、警視庁の警察としての誇りは、お前らに皆無か!996係はそんなのでいいと思うか?尾野君!」

「はいっ、すんません、お願いします!」

「尾野君は一応、書類仕事に専念しているか。俺の話は聞いてなさそうだな……。西井は?」

「警部。早く行かないと水野さんに怒られますよ。一服してるなら、早く行かないと。」

「そ、そうだな、西井。さあ、お前ら行くぞー!」

「あら、どうしたの?」

「はっ、木内捜査課長!」

「智恵ちゃん、あゆたんから、連続ひき逃げ事件で、犯人逮捕により、第1会議室にレッツゴー!だってよ!」

「えっ?水野さんそこで電話してて……。」

「もしや、会議が終わりかけ?こ、これはまずいぞ……。お前ら急げー!」

ガチャっ。

「あ、あゆたん!」

「もう!終わりましたよ。でも丁度よかった。実は真犯人が逮捕されたと今、連絡がありました。そっちへ向かってください!今、連行されて取り調べ室だそうです!私も向かいます。」


取り調べ室。裏。

「黙秘ですね。」

「見た感じはそこまで、イ〜っちゃってる!てのはないな。」

「ところで、犯人確定じゃなかったの?」

「それが、会議が終わってから、私のもとに真犯人確保の連絡がきたんですよね。」

「そうなん?会議のホシは冤罪っちゅうことか?」

「そうですね。……でもそのホシ、自首して自白したんですよね。」

「冤罪なのに自分から逮捕されにー?」

「えっ?それはどういうこと?」

「わかりません。自ら逮捕される道を選んできた、ということになります。話によると、真犯人の共犯者でもないらしいです。」

「つまり、冤罪のホシは何らかの目的の為、逮捕された方がいい、と思ったということですね。」

「誰かのためか、自分のためか。まだわからないが、何かありそうだな。」

「早速、水野さん。詳しく教えていただけますか。」

「はい。996係に全面協力を求める指示が出ています。ここでは何ですので、部屋へ戻りましょう。」


「まず、捜査経過から教えてちょ。」

「はい。連続ひき逃げ事件、冤罪のホシの自首、自白により、一時は被疑者確定。だが、事件の様子と自白内容が、不可思議に食い違っていた。」

「なるほど。それで捜査していくと?」

「先程、第1会議室での緊急事件捜査合同会議で、警視庁一課の捜査、偶然居合わせた交通課の証言もあり、真犯人が浮上。」

「うんうん。」

「ですが証拠不十分で、冤罪のホシの身元を調べた結果をまとめて、共有し、資料にしました。」

「うーん、それで?」

「そして、会議が終わって、鑑識課から連絡があり。鑑識結果の決定的物品証拠。真犯人の所有車と、部品が合致した。事件前後の行動から、防犯カメラの映像のホシと間違いなく、真犯人逮捕に至った。」

「ややこしい話だなー。」

「なるほどね。真犯人の情報を教えて。」

「真犯人のホシの名は、溝口孝弥。23歳。仕事は無し、無職。関係者の記録により、過去に自殺未遂をしていた。少年期、学校でいじめを受け、家庭で虐待問題もあり、児童相談所と市が連携していた。」

「よく生きてきてくれましたね。」

「なんかあたしも尊敬するわ。」

「まだ詳しくわからないのですが。軽くこんな感じです。」

「で?連続ひき逃げ事件のきっかけとか、自白は?」

「それが、あの通り取り調べが黙秘で。996係にお願いできますか?」

「そうだな、真犯人の心にも確実に何かあるだろう。そして、冤罪のホシの心にも苦しみがありそうだ。」

「まず、何からいきますか?」

「情報収集からはいるか。 」

「それ、あたしも賛成。まずは土台を固めんとな!」

「ああ。今回は996係、手分けせずあえて全員で聞き込み捜査をする。その方がこの事件、気づく点が多いと思うんだ。あゆたんは、今ある資料を全て貸してくれ。」

「わかりました。持ってきます。」

「なるほど。それでいけそうね。」

「これでどうだ?OK?智恵ちゃん?」

「え、ええ。」

「どうした?智恵ちゃん。」

「ううん。もちろん、OKよ。」

「よしっ。では、これから!一課を始め順に資料を集めがてら〜に聞き込み調査を開始しちゃう!」

「そうね!」

「この事件には、傷んだ心が絡みあっているようだ。俺ら996係、心のプロ集団の力を合わせ、全て救うぞ!」

「はいっ!」

「……。」

「どうした。智恵ちゃん……?」


「まずは一課に今までの経過の重要かつ不可欠な詳しい状況を聞く。だいたいはあゆたんから聞いたからな。俺らあまり好かれてないけど……。あっ、一課長!」

「ああ、996係か。ご苦労さん。いつもマイペースに楽しくやれて羨ましいよ。警視庁の甘い香りしか知らずにな。」

「こ、これはどういう意味でしょうか。」

「皮肉、嫌味よ。」

「馬鹿にされてるんやっ。きっと。」

「一課長。今回の連続ひき逃げ事件の重要な点を教えてください。」

「おっ!一本杉!」

「はいっ。一課長。」

「こいつは俺の右腕だ。警部の一本杉。デキるやつだからこいつに何でも聞けばいいよ。一本杉。任せたぞ。」

「あっ!ぽんくんか!久しぶりだな!」

「おー!薬丸ー!」

「知り合いですか?」

「元一課のときの同志だ。」

「はいっ!よろしくお願いします。996係の皆さん!」


「まず、重要な事項を教えてくれ。」

「はい。取り調べをしたが、全く吐かないな。心や過去にかなり抱えていることは水野から聞いたか?」

「うん。聞いたわ。」

「本人が話さないこと、まだ情報が揃っていないことから、一課はホシの過去も含めた身元調査を主に今、重視しているな。」

「それで、何かわかりましたか?」

「過去に恋人をひき逃げされていたことが新たにわかった。それが、今回の連続ひき逃げ事件の始まりの時期と重なる。だが、それが全ての原因ではないような気がしている。」

「幼い頃から積み重なって、ってことー?」

「それが大きいだろうな。まさに996係の出番だぞ。過去に仕事にも失敗していたところを恋人に救われた、と周囲の人物から情報提供があった。取り調べで吐いてくれたら、それが手っ取り早いのだが、なんせ心をガッツリ閉ざしているんだよ。」

「なるほどな。まずはあいつを知ることか始めなあかんな。」

「そうだ。996係で取り調べをしてみる前に、交通課に顔出して情報を得てきたらどうだ?あそこは今回この事件に情報提供だけでなく直接にも関わっている。そこで何かわかるかもしれない。」

「おい!一本杉!そこが終わったら手を貸してくれ!」

「はいっ、一課長!薬丸、これでいいか?」

「ああ。ありがとう、ぽんくん。じゃあ俺らは交通課に向かうか。」

「はいっ。」


交通課。

「よう!996係!」

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