第2話

それから一週間が経ち僕の顎が少しだけ動きなんとか口を閉じることができるようになってきた。学校へ行くと友達がみんな僕のところに集まり治まってきてよかったと話しかけてくれた。先生も普段通りに勉強や給食も取ることができるから無理をしないで困ったことがあったら周りのみんなに伝えるようにしましょうと話していた。


理科室へ行き理科の授業が始まりなんとなく気になることがあるので校庭を見てみると未だに陥没しているあのオレンジの跡が目にいってしまってしょうがない。他のクラスの生徒が体育の授業をしていて長距離走を行なっているのだが、その数名が陥没によってできた穴のふちに何度かつまづいているのに思わず笑ってしまった。先生は先日なぜオレンジが落下してきたのかみんなで討論してみようかと話し、何人かの生徒から次の意見が上がっていた。


・ニュースでも流れていたように、他の惑星との衝突によりそれを繰り返しているうちに地球に突入して落下した。


・国際宇宙ステーションに滞在している人が間違えてゴミを宇宙に排出してしまい、その中に紛れたオレンジが何かしらの微生物と付着して肥大化していき隕石ほどの大きいオレンジが出来上がった。


・そもそもオレンジが宇宙に存在しているのに不快感がある。宇宙空間は無重力だし物体自体を浮かばせるとその空間の中で瞬時に砕けてなくなるので、地球を狙ってきたことには何か宇宙人の仕業でもありそうな気がする。


「先生が考えたことなんだけど、どこかの惑星に地球と似たような世界があってそこに住む人が実験のために特殊加工して巨大なオレンジを栽培して宇宙空間に飛ばしたら何が実証されるのかを確かめたかったのかなって」


クラスの全員はそれを聞いて静まり返った。


「先生。オレンジという物質はさっきも言ったように宇宙空間で砕け散ってしまうんだよ。ロケットの中にでも密封して入れて飛ばしてきたってことになるんですか?」

「まあそれに近いものもあるよ。瞬間冷凍させてそれをロケットやスペースシャトルに持ち運んで、飛行士の人が宇宙空間にそれがどう変化していくか飛ばしたかもしれないしね」


先生に直接は言えないけど、まずありえない話を真面目な顔してみんなに伝えていること自体がどうかと思うのだと、今の僕から色々突っ込みたいこと満載だと主張してみたいくらいだった。


「もしそのオレンジが攻撃性の強い兵器だったらどうなるんだろう?」

「そうだなぁ……そのオレンジの中に特殊な物質が紛れていて人的被害をもたらしたら、きっとみんなはその柑橘系独自の中に配合されている酸性が体に付着すると滲んで染みてあちこち痛みが出てくるかもしれないね」

「私、オレンジ好きなのに怖い兵器に使われてしまったのが悲しい。食べたくなくなるよ」

「そうだね。給食でも時々出るよね。ただそのオレンジとあの巨大なオレンジは全くの別物だから、そんなに不安がることはない」

「どうして言い切れるんですか?」

「解体作業が終わった後に専門家の人たちが調べたみたいなんだけど、僕らが普段食べているオレンジと、巨大なオレンジを一部取り出してそれぞれの物質の違いを調べたらわかったことがあるらしいんだ」

「えっ、何?何?」

「巨大オレンジの皮から柔らかいコンクリートの物質が紛れていたらしいんだ」

「全然わからないよー」

「つまりだ。あの巨大オレンジの中には何かの生き物が住み着いているようなんだ」


クラスの全員は先生をますます疑い冷たい視線を彼に送り出していた。そうしている間に授業の終わりのチャイムがなったので、先生はこの討論は次の授業に持ち越す事にするといいクラスのみんなは理科室から出て教室へと戻っていった。

放課後、僕は友達と一緒に帰り家に着くと早速ばあちゃんに授業で話したオレンジの事について伝えると笑いながらあり得ない話で面白いと喋っていた。


数日が経ったある日、いつも通りの時間に学校へ行き玄関の靴箱の所へ来ると自分の上靴がなくなっていたので、誰かが間違えて履いたのかと思い何も履かないで教室へ行き、おはようとみんなに向かって声をかけた。


「さっき、あいさつしてここに入ってきたよね」

「え?今来たばかりだよ?」

「見て。机の上にバッグが置いてあるよ」


僕は友達が言うように机に向かうとすでにバッグが置いてあって机の中にも教科書などが入っていた。僕は誰か他の人が置いたのではないかと話すと、僕自身がやっていたよと返答していた。試しに体育館へ行き誰か遊んでいないか見に行ってみたが、思い当たるような人には会わなかった。

チャイムが鳴ったので教室へ向かうとすでにクラスのみんなが着席していて、僕の席を見てみると誰かが座っているのが目に入った。しばらくドアの隙間からのぞいていると、先生が出席を取り名前を上げていくと、僕の番になった。

すると、その席についていた人は元気よく手をあげて僕の名前に反応を示していた。


何が起きているのかがわからなくなり、再び玄関へ行き靴を履いて校内の外へ出た。しばらく歩いて行き駅に着いたので、何かを思い立ったかのように僕は自動券売機の前に行き持っていた財布からお札を出してI Cカードにチャージをした後、改札機を通りほとんど行かない場所を目指したいと思って電車に飛び乗った。


車内はあまり人が乗っていなかったので座席に座りながら窓の外を眺めていた。見慣れない景色がどんどん広がっていくたびに、僕もわくわくする気持ちが高くなっていった。

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