会いたくて
「別れよう」
それは突然のことだった。
私は彼にずっと憧れていた。
優しくて頼りがいがあり、笑顔がとても素敵。彼のことが頭から離れず、いつしかずっと彼のことばかりを考えるようになっていた。
そんなある日、私は彼に告白された。
私はとても嬉しくて、涙が止まらなかった。あまりに泣くものだから、彼が戸惑ったのはいうまでもない。右往左往している彼が可愛らしくて、私の知らない一面を見れたことがなによりも嬉しかった。もう泣いているかと思えば笑顔になる私は彼の目にはどんなふうに写ったのかしら。
ただ言えるのは彼の瞳にはちゃんと私が写っていたことだ。
それから私たちは付き合うようになった。、一緒に映画を観たり、お互いの趣味について語り合ったり、仲良しご飯を食べたり、毎日が幸せでいっぱいだった。
私はこれからもずっと一緒にいるのだと思っていた。
けれど、彼は違っていた。
ある日突然別れようと言い出したのだ。
あまりにも突然のことで、何が起こったのかすぐには理解できずに、私は聞き返した。
「別れよう」
彼はもう一度いう。
「どうして?」
私が聞き返すと彼は俯いた。
その目はものすごく悲しそうだった。どうしてそんな顔をするのだろう。私といることが辛かったのだろうか。
私は彼と過ごした日々を思い浮かべる。
幸せだった。
彼はいつも私に優しくしてくれたし、笑顔を向けていた。そのうらでは苦しかったのだろうか。私は彼に辛い思いをさせたのだろうか?
私は混乱した。
「そうじゃないんだ。俺にとっては君は素敵な女性だ。一緒にいて幸せだった。いまでも大切に想っている」
「だったら、どうして?」
「ごめん。俺にはやらなきゃいえないことがあるんだ。だからもうこれ以上一緒にいることはできない」
「意味がわからないわ! やらなきゃいけないことってなによ!? 私と別れないとできないことなの!?」
私は彼に詰め寄った。彼はそれ以上なにもいわなかった。けれど、悲しげな瞳の向こうには私の知らないなにかを見ているようだった。それは私が見ることのできないもので、決して触れてはいけないことだといっている。
「ごめん」
彼は私の手を離すと、私に背を向けて歩きだした。
待って!
そういって追いかけたかった。それなのに私の足は動かない。
ただ遠く離れていく彼の後ろ姿を見つめるしかできなかった。
それから彼は私の前から消えた。
どんなにLINEしても既読にすらならず、電話をかけても呼び出し音はなるのにつながらない。
いったい彼になにがあったのだろう?
今頃どこにいるのだろうか?
あれから一年以上たったけど、私は彼を忘れることができなかった。
いまでも会いたい。
彼に会いたくてたまらない。
恋しくて
恋しくて
会えないほどに、
彼にたいしての想いが募るばかりだった。
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